検察が印象操作に必死なのは煽り耐性が低いからかも

これは、「煽り耐性」に注目することで、ライブドア事件に全く違う視点が持てるかも、という自戒をこめたエントリーです。

ライブドア、株売却に海外口座…資金洗浄かという記事を読むと一瞬、「やっぱりホリエモン真っ黒だったのか!」と思ってしまうが、この文章をよく読みなおして見ると、ホリエモンプライベートバンクを使っていた疑いについてはある程度詳細に書かれているが、暴力団とのつながりについては、具体的な事実が含まれてない。


プライベートバンクは個人資産家の財産を総合的に管理するのが主な業務で、特にスイス系の金融機関は、匿名性が高いとされる。捜査機関の口座照会を拒むこともあり、指定暴力団山口組旧五菱会系のヤミ金融グループによる事件など、犯罪収益のマネーロンダリングに悪用されるケースも多い。

暴力団との関係を匂わせているのは、この文だけだが、これはホリエモンライブドアに関する事実が何も含まれてない。これでは、プライベートバンクを利用してる人は、全部そういう関係の人になってしまう。

それで、続報に注目していたら、今日になってGoogle Newsを資金洗浄で検索してみると、プッツリこの件には触れてない(19:30現在)。

マスコミには独自のネタが何も無く、検察のリークをそのまま書いているようだ。

「検察、必死だな」という感じ。

もちろん、実際には、まだ表に出せない疑惑がたくさんあるのだろうが、では、何で、今の段階で、こういうネタを無理にマスコミに書かせるのか?

そういうことを考えると、私の脳内には、三億と1とおりの陰謀論が飛びかってしまうのだが、落ち着いて考えてみたら、もっと単純な説明があることに気がついた。

検察って、意外と煽り耐性が低いのである。

そう考えると説明できることがたくさんある。

検察に限らず、日本で偉い人は、下の者の感情論に配慮しながら、権力の階段を昇りつめている。だから、ネットでいろいろツッコミを入れられるのが我慢できないし、それが具体的な権力基盤の崩壊につながることへの危機感が必要以上に強いのだ。特に、検察は純粋まっすぐ君が多いので、せっかく逮捕したホリエモンに、国民が悪感情を持ってくれないと不安になるのかもしれない。

だから、捜査もそっちのけで印象捜査に必死になり、なんとかホリエモンを悪者にして、自分たちが感情的に支持されようとする。

ブロガーや掲示板利用者は、ホリエモンが好きだから検察にツッコミを入れるのだ、と検察の純粋まっすぐ君は、そう考えてしまうのである。だから、「みんなボクを悪者にするけど、ボクの逮捕したコイツは本当に悪いヤツなんだゾ。こんなに真っ黒なヤツなんだぞ」と訴えてしまうのだ。「もっとホリエモンを嫌いになって、ボクをホメてよ!」ということだ。

だけど、大半のブロガーや掲示板利用者はは、具体的な事実のない印象操作にはむしろ、逆に悪印象を持ってしまう。ホリエモンが嫌いな人も、検察に疑いを持つ。そこで、検察はますますムキになり、ブロガーはますますアツくなる。

こういう悪循環があるのではないだろうか。

こうなってしまうのは、ブロガーというのは、一般に標準より煽り耐性が強いからだ。だいたいブログを書いていて、恥をかかずにすまされることはめったにない。そして、だいたいブロガーは自分のアクセス数を過大評価しているので、何か鋭いツッコミを入れられた時は、「万座のまっただ中で恥をかいてしまった!」と思うのだ。

ネットをやってると、大なり小なり、そういう経験で鍛えられている。

そういう自分たちを基準として、検察やマスコミのやることを見ると、「煽り耐性の低さ」が盲点になって、論理的な納得できる行動モデルを構築することができない。勢い、「自分に見えない何かがあるのだろうと」考え陰謀論に走る。

ちょっと一般化すると、世の中に秩序があるのは、感情的な納得感とシステムへの信頼を大半の国民が持っているからだけど、どちらに力点を置くかに関して、デジタルディバイドがあるのだろう。ネットなんかにハマる人間は、世の中に感情的な納得感など持てるものではないと、ハナからあきらめている。嫌いな奴が上にいてもいいから、システムが回ってくれればいいと思うのだ。

しかし、たぶん、そういう行動原理ではエラくなれなくて、エラくなる人は、感情的な納得感に重点を置いて、自分を律している。そして、それが自分の権力の基盤だと思っている。だから、好かれないと不安になるし、それは漠然とした不安ではなくて、具体的に権力を失うことに直結した悪夢なのだ。そして、システムを建て直すより、国民の感情を変えようとする。

このすれ違いを「煽り耐性」を基準として可視化、モデル化することで、日本の政治的な事象がシンプルに見えてくるかもしれない。

ついでに、ちょっと脱線すると、ひろゆきと小泉さんがしぶといのは、煽り耐性が超人的に強いため、一般的な権力者に通じる決め技がなかなか通じないから?

なお、このモデルは陰謀論と両立しないものではなくて、むしろ、裏世界の人も権力者の「煽り耐性」の低さ(感情論的権力喪失への過剰な恐怖)につけこむことが多いのだと思う。