ヒトに関するグラフとウィルスに関するグラフの違い

世の中にはたくさんの数字とチャートがあって、みんな食傷気味というか、簡単にそういうものを信じない癖がついていると思います。

しかし、コロナに関する数字やチャートは、ちょっと違うんじゃないかな、という話をしたいと思います。

もう忘れられてるかもしれないけど、100日ワニ騒動というのがあって、あれは突然爆発的に話題になって、あっという間にしぼんでしまいました。あれに関するグッズの売上が、コロナのグラフみたいにグイーンと右肩上がりになる期待を持っていた人は、今頃、ガックリしているでしょう。

だいたい、右肩上がりのグラフはみんなあんなもので、あてにならない、やってみなきゃわからないと思ってて、コロナも同じだろう、と思ってしまうのも無理はないかもしれません。

でも、コロナと100日ワニには、大きな違いがあって、それは、ヒトはミクロのふるまいが流行り具合によって変わるということです。つまり、ステマ騒動とかそういうの無くても、誰もが「ワニ」「ワニ」と言い出したら、「まだワニかよ」と言われるのが気になりますよね。ヒトのミクロのふるまいは、マクロの結果、つまり「みんながワニを読んでるか」ということに大きく影響を受けるんです。

ワニが流行る前の人のふるまいは、ある程度予想できます。つまり、それはワニのコンテンツそのものが持つ力。100人にこれを読ませれば、何人が感動して、そのうち何人が友達に紹介するか、その割合は、たぶん、そんなに大きく変動しない。だから、流行り始めた時点で、Twitterでその様子を見ていれば、「これは相当流行るぞ」ということは予想できるし、アンケートとかモデルとか使って、最終的に何十万人がグッズを買いそうかなんてことも予測できるのかもしれません。

でも、人のふるまいは他の人のふるまいによって影響を受ける。「みんなが読んでるから自分も遅れないようにしよう」という人もいれば、逆に「まだワニかよだせーな」という人もいて、影響の受け方はそれぞれだけど、流行る前と後ではふるまいが違います。

ステマ騒動は、流行りきった所で起きたので影響力が大きかったし、逆にあの対応の仕方によっては好感度を上げて、さらなる飛躍のステップとすることも可能だったかもしれません。

だから、社会現象のモデル化は、本質的にミクロとマクロの相互作用が含まれていて、とても不安定なんです。

そういうモデルから導き出された数字やチャートは信じないっていうのは、生活の知恵として正しい。

しかし、ウィルスのふるまいは、マクロの影響を受けません。「このビッグウェーブに乗って、俺もいよいよ感染の旅に出るか」なんてウィルスはいない。ウィルスは、飛沫感染でも接触感染でも、条件が満たされれば感染するし、満たされなければ感染しない。「ウィルスは忖度しない」と言われますが、それより大事なことは「ウィルスは空気を読まない」ということです。

ミクロのふるまいが一定なので、モデル化しやすく、感染者が10人でも1000万人でも同じモデルが使えます。

今回の騒動で、日本政府やクラスター対策班に批判的な意見をだいぶ見ましたが、SIRモデルそのものを批判している人はほとんどいません。専門家会議も批判者も同じ数学のモデルを使っていて、その当てはめ方やそこから導き出す対策には大いに異論が出ていますが、モデルそのものは両者で合意されています。

議論になっているのは主としてヒトのふるまいの問題で、それはウィルスにとっては環境で、環境によってウィルスのふるまいは確かに変わるけど、同じ環境であればウィルスのミクロのふるまいは一定で、マクロの結果、つまり感染者数や死亡者数は、予測や推計が容易であるということには異論はありません。

政治家は右肩上がりのチャートを見て、「行くとこまで行ったら、それはそれでなんとかなるだろ」みたいに考えがちなのだと思います。ステマ騒動がワニ熱を一気に覚ましてしまったように、感染が拡大して、混乱が起きて、世の中が大騒ぎになったら、マクロな対応でミクロのふるまいを変える手段がある、と無意識に想定してしまうのだと思います。

まあ、ヒトのふるまいについては、政治家やビジネスマンの方が正しいと思います。

でも、感染症の広がりについては、ヒトのふるまいよりもウィルスのふるまいの方が重要です。ウィルスはどれだけ感染が広がってもミクロのふるまいを変えない、チャートどおりに上がっていく。このグラフは、ワニとは違う見方をしないといけません。

逆に言えば、ウィルスは台風や地震などの天災と比べると、数学で扱いやすいんです。

モデルが悲劇的な予測をした時、それは結構当たる。8割おじさんが「7割では絶対ダメ」というのは、信じられないくらい絶対的な話なんです。「何が8割なのか」「どういう8割がいいのか」というとこは間違ってるかもしれないし、議論の余地があるけど、「7割では絶対ダメ」というとこには議論の余地がないんです。

ーー ついにタレントの指原莉乃さんにも応援メッセージをもらえましたね。

いつか流行が終わったら、会えないかなという妄想を抱いています(笑)。

8割おじさんが早くさっしーに会えるように、みんな数字をそのまま受け止めて、#StayHomeしましょう。