2ちゃんねるの中で起こった事件

グローバルスタンダードに準拠していないテロ

今回のイラク日本人拘束事件で一貫して感じることは、テロというものの「グローバルスタンダード」に準拠してしてないということだ。グローバルスタンダードとは、例えば、イスラエル軍、ハマス新指導者ランティシ氏を殺害みたいなやつ。


ランティシ氏(56)が乗った車に対し、武装ヘリによるミサイル攻撃を行って車を大破させ、同氏を殺害した。

「自動車にヘリからミサイル攻撃」ですよ。殺伐としてますねえ。血も涙もない。

こういう殺伐さはお互いさまの所もあるし、反戦を訴える人もこういう殺伐さと対決するだけの強さを持っているのが、グローバルスタンダードな反戦だと思う。

finalventさんもイラク人質事件のぬるさで似たようなことを言っている。

この事件と同時にパレスチナ問題やファルージャの惨状を追いかけていると、メジャーリーグ高校野球を交互に見ているような違和感がある。

2ちゃんねるに反応するテロリストとマスコミ

一番不思議だったのが、2ちゃんねるの問いかけにいちいち事件が反応しているように見えたこと。

  • 最初の声明で西暦が指摘されると次の声明でイスラム
  • ヨルダン潜伏説が流れるとタクシー運転手の仲間から入国したとの証言
  • ヒロシマナガサキへの言及に疑問が持たれると仲介者がそれに触れる
  • PTSDという診断に疑問が持たれると病名変更

他にもいっぱいあったと思うが、タイミング的にスレの流れをチェックしている人が背後で総指揮を取っていたように思える。

また、自業自得という批判も多くあったが、それを巡っては2ちゃんねるとマスコミが論争しているように思える所もあった。

「自作自演」で説明できないこと

これらの疑問は「自作自演」と考えれば、かなり解決するように思えるが、私はそんな単純な話ではないと疑っている。そういう要素がどこかにあるのは確かだと思うが、それが全てではなくてさらに大きな裏があるように感じている。

全体的なうさんくささから、何より直観としてそう思うのだが、現在でも謎として見えていることがとりあえずふたつある。

まず、ひとつがイラクでそんなことをして大丈夫なのか?ということだ。

もし「自作自演」であれば、現地の仲介者が関係していることは間違いないが、「殺伐」としたイラクでそういうことをしたら味方からは誤解され、敵対者からはそれを非難される可能性が高い。大きく言って、米軍、スンニ派シーア派クルド人というという四者の利害関係だけでもとても複雑だし、さらに様々な隣国とかフランスとか国連とかの思惑がからんでいる。そういう場所で、道義的に問題があり、どういう立場から見ても敵方を利すると言われそうな「テロの自作自演」なんてことをするだろうか。

もうひとつが、政府の反応だ。5人の人質が全員解放されて次がまだ起こってないこの段階で、なぜ、疑惑を明確にしないのか。

容疑を完璧に固めてからという可能性もあるが、もし本当に自作自演だったら、声明などの見える部分でもボロボロで杜撰な計画としか思えないので、現地で捜査し短時間とは言え人質本人にも接した政府には、ほぼ確実な状況証拠があるはずである。なぜ、それを発表しないのか。

また、どこかとの密約のような「言いたくても言えない」事情があるとしたら、部分的なリークが多すぎる。むしろ、人々の興味を引きつける為に、定期的に「燃料」を補給しているように見える。まるで、政府はティザー広告をやってるようだ。

隠されていた?ニュース

それで、これが別の事件の目眩ましではないかと考えると、ちょっと気になってくるニュースがある。

どちらも非常にインパクトのあるニュースで、この事件がなければもっとずっと大きく取りあげられていて不思議ではない。イラクの事件でふっとばされたような感じである。

前者は、北朝鮮に融和的な政策(比較的としても)を主張するウリ党が第一党となり、明確に左派で北朝鮮側の工作機関とも噂される民主労働党が10議席も獲得したわけで、我が国の対北政策にも大きな影響がある。特に、民主労働党比例代表での得票率は13・0%にもなっている。ウリ党の38・3%、ハンナラ党の35・8%と比較しても、相当な躍進である。

また、後者はこれまで完全にアンタッチャブルだった所に切りこんでいるわけで、相当な英断?である。

どちらも、かなりの地殻変動を感じさせるものだ。「これを隠すために、イラクの事件をでっちあげた」というと、ちょっと陰謀論がききすぎだが、「ここから注目をそらす為に、政府がイラクの事件を利用しているかも」くらいのことは考えてもいいような気がする。

ただ普通に考えると、どちらも注目を集めた方が小泉政権に有利なので、そこは私にはよくわからない。あるいは、別のニュースなのかもしれないが、何かに注目を集めない為のダミーであることは可能性としてあると思う。

あるいは、もっと単純に考えて、サマワから報道関係者退避中サマワで何か起きても本当のことがわからなくなりつつあるんだけど、それもあまり問題にされない(しにくい)。

たすきがけ買収

たすきがけ買収」とは、アカシックレコードでよく使われている言葉で、敵対者の一味を操作して自滅を誘うという高等戦略のこと。

今回のことをそれにあてはめると、黒幕はアメリカか日本政府で、目標は左翼勢力の弱体化。

手段としては、お馬鹿なテロの自作自演に誘いこみ、意図的に他の左翼勢力の共闘を引き出す。そして、この人質を支援する勢力が集った所で、それが「自作自演」と暴露する。

そうすれば、「平和」とか「地球市民」とか「グローバルなんとか」とか、そういう勢力は一網打尽で力を失なう。社民党民主党の左派も巻き添えになる。その時に「自作自演」の共謀関係は問題にされず、人質となっていた人を指示する立場であれば、「自作自演」と同罪とされてしまうわけである。

参議院選挙が近くなってから、このような爆弾を投下すれば、小泉政権は磐石である。

2ちゃんねるは自己言及できるか

上に書いたことはたぶん突っ込みが甘いか見当はずれで、何か当たっていてもまぐれ当たりに近い。

私が言いたいのは、普通だったら、こういう観点が2ちゃんねるにもっと出回ったはずだということだ。もうちょっと陰謀論が濃いのや、海外メディアの公開ソースを丹念に追って裏付けを取ったものとか、私の書くものよりはずっと面白い記事が出回る。

実際には、この辺に言及しているスレもあったのかもしれないが、いつもの自分の参照手順では見つけられなかった。(実は、私はあれこれ言うほど、そんなにたくさん2ちゃんねるを見ていない)

このあたりの突っ込みの甘さを指して「2ちゃんねる敗れたり」と言っている。本来なら、ここらあたりにもっと重要な「論点」があって、平常心ならそれにかするくらいのことはできたのではないかという気がしてならない。「結論」でなくて「論点」あるいは「観点」かもしれないが、とにかく何かしら本質のしっぽのようなものが、ちょっと探せば見つかるはずの場所だったのだ。

それで、この事件の何が特殊なのかと言うと、2ちゃんねるが事件の主役であることだろう。マスコミやNGOは明らかに2ちゃんねるを意識していた。おそらく人質の家族も意識していた。ヘタをしたら、犯人も2ちゃんねるを意識していた。

主役は2ちゃんねるだったのであって、2ちゃんねるがこの事件を「報道」するのは自己言及なのだ。だから、そこで問われるのは、2ちゃんねるがいかに自分を相対化できるかということだ。

例えば、韓国で同様の謎めいた事件が起こって、Naverとマスコミや人質が対立関係にあったとする。それで、どのような仮説も全ての謎を説明できないとする。

2ちゃんねるがこれを「報道」したら、もっと冷静に「報道」できたのではないか。つまり、どちらかの立場にこだわらず、広く情報を集め、偏見なく論理的に推理して、真実に至る。真実の核心までは到達できなくても、そこにつながる論点は提示できる。そういうメディアだと私は思っている。

しかし、現実のこの事件では、一方の主役はNaverではなくて、2ちゃんねる自身であった。そこで2ちゃんねるが平常心を失なってしまった。

もちろん、疑惑の追求は厳しく行なわれていたし、そこで明かになったこともたくさんあると思う。しかし、そういう直線的な見方以外の野次馬が少なかったような気がする。

私が「多様性を欠いている」と書いたのは、後で考えてみると、「2ちゃんねるへの帰属意識に充分な多様性が見られない」ということだ。2ちゃんねるが世の中を動かしつつある(少なくとも相手にはされつつある)のを見て、ちょっと舞上がっちゃったようだ。

そこで見落したものがあると私は思う。その可能性を上にいくつか提示した。かなりあやふやで飛躍の多いものだが、2ちゃんねるが機能してないと、私の力はこんなもんだ。

ひろゆきは?

私は彼を過大評価しているのかもしれないけど、リアルの世界で相手にされつつある便所の落書きを作ったあの人は、もし仮にこの見方に同意するとしても、面白がっているような気がする。

2ちゃんねるが平常心を失っても、ひろゆきは平常心を失わない。かと言って、それをどうこうする気もない。