「真実の予言者」を批判すると「真実の予言者」ができてしまう話
真実の予言者ってのは、こんな感じの記事を機械が自動生成するプログラムではないかと思います。
ただし、これをいきなり全自動でやるのは、今世紀中には不可能です。でも、mumurさんにとっても13Hz!のわくたまさんにとっても、これらの記事そのものを書く時は、そんなに労力は使ってないでしょう。
お二人の創造性は、このネタに着目する時点で使われています。
つまり、「北朝鮮が何かした時には平和団体の動向をチェックしよう」とか「安倍政権の教育問題に関わるページには圧力がかかりやすい」ということを発見するのは、人間の仕事です。お二人とも、それに着目したのはこれらの記事を書く前のことで、ほぼ同様の着眼点で過去にヒット記事をいくつか書いています。
「真実の予言者」は、そういう記事が注目を集めた時に、その記事が注目を集める理由として「北朝鮮→平和団体→某政党」「安倍政権+教育→某団体」のような関連を(半)自動的に抽出するプログラムです。
私の見積りでは、ページのリンク関係を解析する処理を高度化することで、そういう関連を抜き出すことができるかどうか、それはグーグルが5年かかってできる確率が50%くらいです。人間がある程度サポートすることでそれができる確率は80%くらい。
日本語の文章を構文解析や意味解析をする必要があるとしたら、これはかなり困難なテーマですが、基礎となる情報はリンクと単語だけにして、計算を複雑にすることで対応できるなら充分可能でしょう。「絶対できるとは言えないけど、絶対無理とも言えない」くらいの難易度だと思います。リンクの代わりに、ブックマークやRSSリーダーのような、構造化された情報を膨大に集めたら自動化できるような気がします。
そして、国会中継をストリーミングで流しながら音声解析をして、問題の議員が関連のある議題で発言すると、こういう話題が自動的に横に出て来る。それを横目で見ながらコミュニティ内でチャットできたら、国会中継というコンテンツがかなり面白くなると思います。
ポイントは、
- 政治ポータルとして、ニュースや動画を流しながら、横に上記のような関連情報を流す
- 「見たい人だけ見ればいい」というスタンスでサービスを提供するだけ
- 使用する基礎情報とアルゴリズムは全て公開、従って人為的な調整はなし
- 提示するのは、公人に関する一般公開された情報のみ
これなら、政治的、法的、倫理的な問題点はないと思います。でも、政治的な影響力は甚大です。
問題点は、どれだけうまくやっても「記事の選択基準が偏向している」という批判が出て来ることで、これは避けられません。つまり、自分の支持する政治家がこれによって自爆してしまったら、「真実の予言者」は偏向していて、特定の政治家ばかり狙い撃ちしているように見えるでしょう。
この批判を回避する為に、site: オプションを使うのです。
つまり、このような関連を抽出するベースとなるブログ等の情報を制限することを可能にするわけです。右の人のブログを優先するように登録すれば、左の政治家の弱点が優先して表示される、左の人のブログを優先登録すれば、右の政治家の問題点がよくわかる。今の政治は、右翼左翼では簡単に分類できないほど複雑化していますが、とにかく、登録するブログによって、出て来る情報が違うようにしておけば、誰にとっても納得できるような選択基準によって、関連記事を提示することが可能です。
もちろん、その登録情報は共有できます。mumurさんやわくたまさんのような方が、自分の着眼点を登録情報として公開してくれたら、それを共有して利用する人はたくさんいるでしょう。それを「購読」しておけば、冒頭のような記事が自動生成されて表示されるわけです。mumurさんやわくたまさんは、古いネタは機械にまかせて、ブログに書くのはさらに新しいネタ、疑惑になるでしょう。「真実の予言者」は、人力でなければ生成できないそういう新しいネタを解析して、同じ疑惑は自動的に追跡してくれます。
つまり「真実の予言者」は、各人の登録情報を元に人間がやっていることを代行するだけのプログラムで、AI的な判断は一切行ないません。
しかし、こうして集められた「各人の登録情報」は、総合することができます。それによって、全体のランキングのような形で、ポータルのトップページができてしまうと思います。
もし、「これは大衆の下衆な好奇心を満たすだけの下劣な道具で、政治のパパラッチ化をもたらす」というような批判があったら、登録情報を総合する時にバイアスを加えればいいのです。見識が高い信頼できる有識者の登録情報からポータルのトップページを生成するわけです。有識者は、偏見が強いブログやスキャンダル的な情報ばかり追いかけているようなブログは見ないで、もっときちんと本質的な議論をしているブログしか見ないはずです。そこから生成される「関連情報」は、本質的にその政治家の政治的姿勢自身の問題点を指摘するものになるはずです。
誰にそういう「有識者の選択」をさせるかと言えば、「これは衆愚政治だ」という批判をしている人にまかせます。実際に自分で調整して使ってみれば、批判をしている人も「これは使い方によって非常に重要な情報を網羅的にピックアップする大変有用な道具だ」と思うことでしょう。「だから、自分の調整した俺ポータルをみんな見なさい」と言って、その人が信頼されている人ならば、たくさんの人がその有識者の作った「高度な」ポータルを見るでしょう。
それでもちろん、「俺は誰が何と言おうがそんなものは使わん」という人もいるでしょうが、これを使っている人とそうでない人では、情報の処理能力に大きな違いが出てしまいます。政治情報を継続的に追いかけている人でも、「北朝鮮→平和団体→某政党」のような関連のリンクは脳内にたくさん持っていて、新聞やテレビを見ながら、それを使って人力で情報処理しています。「真実の予言者」は、そういうルーチンワークの定型的な部分は自動的に処理してくれるので、本当に創造的なことに集中できます。
自分の脳ミソを、創造的なことに集中して使う人と、機械にできることを人力でやっている人では、どうしても生産性が違ってきます。長い目で見ると、「真実の予言者」に頼らないと、他の人の議論についていけなくなると思います。
ポイントは、「真実の予言者」を批判すると、「真実の予言者」を改良するためのヒントを与えることになるということです。だから、最初に「政治関連に特化した情報サービス」としてごく限定された有用性があれば、そこから加速度的に改良していくことが可能になります。誰も強制してないのに、誰もがこれに依存するという状況になるまで、それは止まりません。
そして、恐いのは、「真実の予言者」には、各人の独自な判断を総合することができることです。ここで「ブログ登録情報」や「有識者の選択」と呼んでいる調整の為のパラメータは、全て数字です。数字だから合算してそれを総合することが可能です。総合した結果は「日本国民全員の総意」に限りなく近いものになります。
グーグルが作らなくても、近い将来、誰かがこういうものを作ると思います。技術的な困難はあるけど、頑張ればできそうな気がするし、作れば絶対儲かる。基本的に運用コストはマシン代と回線代だけで人件費がかからない事業だから。
人工知能って、実は生まれつつあるのかもしれない。ひとつのマシンのひとつのプログラムがチューリング・テストに合格するイメージを持っていたけれど、実際には違うのかも。いったいどこにつながっているのか、何台のマシンがバックエンドにあるのか、そこに人間が介在しているのか、さっぱりわからないけれど、問いに答える存在としての知能。
私も、そういうものを想定しながら前の記事を書いてました。