「広場」としての Eyes on Tibet
一日一チベットリンク運動 / Eyes on Tibet には、たくさんのブロガーの方に賛同をいただいいて、多種多様なエントリが書かれました。これを次のページにまとめてみました。
このページは毎日、毎日自動的に更新され、新しくチベットについて書かれたエントリが追加されていきます。
このページの詳細については、以下のページを参照してください。
最初に私が一日一チベットリンク運動というアイディアについて書いた時に、id:voleurknknさんが「変革はつねに広場で起こる」というエントリを書いていました。
普段はあちらこちらに散在している押さえつけられた感情は、広場というある空間に集合することで初めて集団的な声になることができる。思うに、かつて力をもたない集団が変革の声を挙げることができた基礎的な場というのは、広場だったのではないでしょうか。ただし広場にはヴァーチャルな次元の支えが必要です。それは「われわれ」について語り継いでいく言葉であり、またその言葉を流通させるさまざまな媒体です。新聞やパンフレット、またはチベットの場合では僧侶の祈りやダライ・ラマ14世の写真などが、いわばヴァーチャルな広場となって、人びとを象徴的に集合させていた。しかしそれがある破壊力のある激発となるためには、やはり物理的な広場が必要となる。
しかしこのヴァーチャルな広場に化せられていた物理的な制約は、インターネットの出現によって大きくその意味を変えました。もちろんそこでもいわゆる「デジタル・ディバイド」の問題はあるわけですが、それでもインターネット上には、これまでには不可能であったような広場的な場が可能となったというのは確かであるように思えます。はてなに押し寄せる新着日記の波などを見ると、「そこに人がいて語っている」という、ほとんど身体的といっていいような現前の感覚、「そこにいる」という広場的接触の感覚を覚えます。
確かに私は、漠然とこういうヴァーチャルな「広場」を作ることをイメージしていました。Eyes on Tibet Todayは、それを目に見える形にしようと思って作成したものです。
「広場」には、多種多様な人々が集まると思いますが、この運動にも、政治的な立場、チベット問題への関心の持ち方、その深さ、ブログのスタイル等、あらゆる点で多種多様なブログが集っています。たくさんの人がたまたまある場所に集うように、たくさんのブログが「チベット」という一点の関心を共有することで、このページに集まっています。
公園のベンチで行き交う人たちをボーっと眺めていると、なかなか飽きないものですが、このページに表れてくるエントリを順番に見ていくと、それに似た楽しさがあります。「いろんな人がいるんだなあ」と思うのですが、どのエントリにも、主要なテーマであるかどうかは別として、最低一つはチベットに関するリンクや言及があるわけです。
これまでも、ブログ等の情報を集約して、効率的に情報を集めようという試みはたくさんあったと思いますが、おそらく、そういう場に集まる人は、何か特定の目的に向かって一直線に進んでいる人に限られることが多かったと思います。「広場」というよりは「集会」のようなイメージ。
Eyes on Tibet today は、浅いけど継続的な関心を持つ人のブログを集約することで、ちょっと違う味わいのページになっていると、自分では思っています。リンクされているURLをたどると、かなり幅広くいろいろなページを見ることができます。
この考え方は、チベット問題に限らずいろいろなテーマに適用できるような気がしています。
それで、その方法論のことを「アジャイルアクティビスト」という言葉で呼んでみたいと思ってます。その精神については、次のページに書きました。
そして、これをネットで展開する具体的な手順としては、以下のような感じです。
- 浅い関心でもいいけど、多くの人が継続的に関心を持つようなテーマ、そして、それがあまり浮上してこないテーマを選び出す
- そのテーマを一言で表現するキーワードを考える
- 参加者を集め、そのキーワードを含むエントリを各人のブログに書いてもらう
- Yahoo Pipesのようなフィードアグリゲーターで、参加者のブログからそのキーワードを含むエントリを抽出したフィードを作る
- netvibes.comやtumblrのような、フィードをWEBページとして公開できるサービスを利用して、この情報を共有する
- フィードからブログパーツを作成し、これを広めてもらう
そして、はてなグループや、Google Sites のようなWiki系のサービスをハブ的なサイトとして使用します。 Eyes on Tibetでは、この二つのサービスを使用しています。
これらは全て無料のサービスで、利用するのにそんなに深い技術的知識は必要としません。
Pipes等のフィードを使うサービスや、独自ドメインを必要とするGoogle Sitesを使うには、多少のノウハウは必要です(実際、Pipesには結構苦戦しています)が、本格的なプログラミングのスキルは不要です。Eyes on Tibetでやってるとことを参考にすれば、Webに慣れている人なら充分可能なレベルです。多くの人が賛同するようなテーマであれば、そのくらいはできる人が必ず中に一人か二人はいると考えてよいと思います。
特に、フィードの集約と展開については、今後出てくるサービスも含め、他にもいろいろな可能性があります。
この「アジャイルアクティビスト」という方法論が、ネットの外でどこまで影響力を持ち得るかは未知数ですが、こういう形で広く関心を喚起する中からリアルの集りが生まれてくることも含め、大きな可能性を持っていると私は考えています。
このような仕組みがもっと活用されれば、政治というものが変わっていくでしょう。
つまり、強い関心や利害関係を持つ少数の人の力より、一人一人の関心やコミットメントの程度は浅くても、多くの人の関心、懸念を集約することで、政治的な影響力を発揮していくことが、誰にでも可能になるのではないかと思います。
誰でも「広場」は無料で作れるのです。そして、たくさん人が集まる「広場」は、それだけで影響力を持ち得るのです。問われるのは「関心」の総量だけなのです。
多くの「関心」が動き出す時には、どんな独裁権力もそれに逆らうことはできません。歴史を見ればそういう事例がたくさんありますが、最終的な決着に至るまでには多くの摩擦があったこことも事実です。「アジャイルアクティビスト」は、ヴァーチャルな「広場」によって、そのプロセスをよりスムーズに進めようとする人たちです。
こういうものは、実際にやってみることで、必ず新しい発見があるものです。チベット問題にちょっとでも関心がある方は、ぜひこの「一日一チベットリンク」に参加してみてください。ブログに「一日一チベットリンク」というキーワードを書いておけば、たぶん私の方が見つけて登録しますけど、それが待ちきれない方は、参加ブログ一覧 - 一日一チベットリンク運動にトラックバックを送っていただければすぐに登録します。
それから、Yahoo Pipesのページから、ブログパーツの登録もできます(Get as a Badge というリンク)。このパーツを貼ることによる参加も歓迎します。