不確定性原理よさらば

毎朝決まって見るページのなかにMSNニュース&ジャーナルがあるのだが、今朝はここに不確定性原理よさらばという記事があった。これが結構衝撃的な内容だ。これまでの物理学の定説が壊れてしまったと書いてある。

そもそも、インターネットも通信とコンピュータの産物で、どちらもトランジスタのかたまりだ。そして、このトランジスタという技術の元になっているのが量子力学と理論である。これだけ実用レベルになっているから、完璧に理解されていると思うのが普通だが、実はこれはよくわかっていない。どんなエライ物理学者でもよくわかってないのだ。それでどうしてモノが作れるかというと、受験生が公式だけを暗記するようなものだ。量子力学の方程式と計算の方法だけは随分前にわかっているのだが、それが何を意味するかは未だに解明されていない。

普通の教科書には、この記事に出てくるボーアとかいう人などが「コペンハーゲン解釈」という考え方を出して、これでわかったことになっているのだが、アインシュタインはこの解釈に随分ご立腹されたようで、さんざん論争をしかけた。別に、その方程式や計算に文句をつけたわけでなく、その「解釈」なるものが気にくわなかった。というのも、この考え方によると、世の中の全てのことが「不確定」になってしまう。「不確定」になるのが、原子とか細かい話で我々の生活に関係ないならどうでもいいのだが、そういう原子を観察する機械で何かを操作すると、その「何か」が「不確定」になってしまう。

例えば、その機械の先にスイッチをつけて、そのスイッチをテレビにつなぐと、テレビがついているのかついていないのか「不確定」になる。猫を密封した容器に入れて、そのスイッチを毒ガス注入機につなぐと(どうしてこんな残酷な例を思いつくのかしらないが、これが有名なたとえ話なのだ)猫の生死が「不確定」になってしまう。スイッチを核爆弾の発射ボタンにつなげば、世界が滅亡するのかどうかが「不確定」になってしまう。なんだかよくわからないけど、猫が死んでるのかどうか一生懸命議論している。どうもそーゆうとてつもなく変な物理学なのだ。

そして、その時の論争ではアインシュタインが負けたことになっているのだが、この記事によると、最近、どうもその結論が間違っているという説が発表されたらしくて、大変な騒ぎになっているらしい。ただ、その説でもアインシュタインが正しかったという意味にはならないらしいが、やっぱりああいう天才がいちゃもんつけたものはどっかおかしいのだ。

それで思い出したけど、最近の物理学者にもペンローズという変人がいて、この人は「人間の頭脳の仕組み、特に『直感』というものが働くしくみがわからないのは、物理学(量子力学)が不完全だからだ」ということを言い出した。といってもオカルト系の人ではなくて、ツイスター理論という立派な業績をあげて、ホーキングがこいつかというくらい、凄い物理学者なのだが、この人が問題にしているのが『直感』というものだ。人間の脳をコンピュータでシミュレーションしようとすると、困難にぶちあたることが多いのだが、中でも『直感』というものがよくわからん動きをする。一番いい例が将棋である。プロの棋士は口を揃えて「どんな局面でも最善の手は一瞬で浮かぶ」という。プロだから読みが早いのはもちろんだが、読みのスピードより全然速く最善の手がわかるだという。

チェスでコンピュータが人間に勝ったといっても、人間がどうやってチェスの手を考えるかという疑問が解けたわけではなくて、話は全く逆なのだ。あのマシンは、人間の思考過程をシミュレートすることをあきらめてから発展した方法論でできあがっている。人間がサイクルやアクセス速度の圧倒的に遅い脳を使って、なぜ一瞬でヒラメクかという疑問はほっぽり出されているのだ。ペンローズによると、この問題が「プログラムのバグを直すプログラムは作れない(これは数学的に証明されている)」という話とからんでいて、量子力学をもうひと押しすると解明されるそうだ。難解だけどへたなトンデモ本よりトンデモな話です。

量子力学の周辺には、こういう面白いテーマがたくさんころがっているのである。