フィールド 響き合う生命・意識・宇宙

HotWiredに出ていた、「心が機械に影響を与える」プリンストン大学の研究で使用されているREGという装置とそれを使用した実験について詳しく書いてある本である。雰囲気的にはいかにもサイエンス・ライターなノリで、たくさんの事例をドラマチックに並べているが、科学的な観点からの検証ポイントはそれなりに押さえている。

REGとは、電子的なホワイトノイズによってランダムに変化するパルス列を発信する装置で、厳密に50%の確率で1と0を出力するよう調整されている。サイコロやESPカードによる念力実験と基本的には同じだが、物理的人為的な偏りの可能性を排除できる。さらに、試行回数をずっと増やことができるので、厳密な統計的処理が可能になる。

その結果、通算で250万回の試行に対して52%の偏りという結果を得たそうだ。「たった2%か」と思ってしまうが、試行回数が多い場合には、統計的に有意な結果だと言う。

それより興味深いのは、この装置で「集合意識」の波動を検出するという実験である。つまり、通常の実験では被験者が「念じて」偏りを起こさせるのだが、この実験では、被験者はおらず、単に装置を稼働させて放置する。そして、特定のイベントの日の動作結果を解析するのだ。


5台のコンピュータすべてで、統計的に有意なピークが三回記録されており、その三回の時刻はほぼ正確に同じ時刻だった。太平洋標準時の午前9時に小さなピーク、それから1時間後にやや大きなピーク、さらにそれから7分後に巨大なピークの三つだった。(P283)

これがなんと、全米の注目を集めたO・J・シンプソン裁判の日なのである。


最初のピークが、テレビで最初のコメントが放映されてショーが開始された時刻、次が、実際の法廷の場面が放映され始めた時刻、そして、最後が評決が告げられた時刻である。世界中のほかの人間たちと同様、これらのコンピュータもO・Jが無罪か有罪かを知りたくて耳をそばだてていたようだった。

著者のサイトには、9・11の飛行機がツインタワーに激突した瞬間には、さらに大きな変動が起こったという話が書いてある。

また、このような現象を説明する枠組みとして、「ゼロポイントフィールド」という理論を提示している。「ゼロポイントフィールド」とは、私たちの回りの量子レベルの波動のゆれが情報を含んでいるという考え方だ。

特に「脳は記憶装置ではなくゼロポイントフィールドのセンサーである」という考え方が面白かった。脳に記憶が蓄えられているのではなく、ゼロポイントフィールドに集合的な記憶が保存されていて、脳は、そのフィールドと相互作用をしてそこから情報を読み取る機能を持っているということだ。


システム理論学者アーヴィン・ラズローなど数多くの科学者たちが、脳とは究極の保存媒体であるゼロポイントフィールドに対するたんなる検索、読み出し機構にすぎないとまで議論するようになっている(P147)

脳を含む体じゅうの細胞が、このゼロポイントフィールドと量子レベルの相互作用を行なっているという仮説から、超能力やヒーリング、集合的意識のようなさまざまな現象(多くは科学的な実験結果があるもの)を説明していて、面白かった。

『皇帝の新しい心』ペンローズ等と比較すると、「意識」というものの不可思議さに対する認識や量子力学との整合性、科学的な厳密さには欠けているかもしれないが、その分読み物としては気楽に読める。この手の理論や実験を幅広く扱っていて、特に各種実験の紹介はたいへん興味深く読めた。