円高の日にはメールとExcelの無いオフィスを想像してみる

円高って、日本に対して世界中が「この子は本当はもっと出来る子」だと見てるってことだと思います。

本当なら日本は、もっともっと生産性を上げられるはずだ、世界中がそう言っていて、世界中の金持ちがそれに便乗している。私もそう思います。ITを活用して、一般的なオフィスワークの生産性を高めなくては日本はもう生き残っていけません。

IT活用は、大きく言えば定型業務と非定型業務に分かれますが、専用の業務システムを開発すれば対応できる定型業務より非定型業務の方がずっと重要です。つまり、扱うデータや文書の構造や、その為の手順が、半分は決まっているけどその都度微妙に変化する、そういう業務です。

そういう分野では、ほとんどの会社で、メールとオフィスソフト(WordとExcel)が多く使用されていると思います。この二つのソフトは、紙の書類で行なわれてきたオフィス業務の延長線上にあるので、直感的に理解しやすく導入しやすいからです。

つまり、一人の作成者がいて、その人が情報を集めたり擦り合わせを行って作成した文書を、責任者の査閲承認の上で、関係者に回覧し、保存する。オフィスソフトとメールは、この流れをそのまま残したまま使えるツールです。

しかし、現在、一般の人が使える非定型業務のソフトは他にもたくさんあります。(()内はプロダクトの例ですが他にもたくさんあります)

ソフトの機能としてはどれもかなり進化してきていて、特に専門的な知識がなくてもGUIで簡単に使えるレベルになりつつあります。DekiWikiのように、企業の中での使用を前提として、閲覧権限、編集権限を細かく設定できるようになっているものもあります。しかし、その割には一般的なオフィスの中には普及していません。

それは、こういうものを活用する為には、紙ベースの業務と全く違うコミュニケーションのあり方を要求されるからだと思います。

言い方を変えると、紙というテクノロジーはコミュニケーションのあり方を一種類に規定するテクノロジーだったわけです。それに対して、上記のソフトは、それぞれが全く違うコミュニケーションの流れを作り出すことを可能とするものです。

非定型業務におけるITの活用とは、それぞれの業務に適したコミュニケーションの流れを選択し、それに合わせて最適なツールを選択することです。今は、それが可能なレベルまで技術は発展しているのだけど、使う側の頭の切り替えが追いついてないのでしょう。

特に「情報をシェアする」という感覚がなかなか広まらない。

たとえば、Google Officeでは、文書の横にチャットの欄があって、スプレッドシートの数字をいじりながらチャットができたりします。

担当者が案を作成し関係者にメールで送信して、シートの数字を訂正して送り返してもらい、さらにそれを担当者がマージするというようなことをやってるなら、関係者一同が出来上がりを見ながらチャットや掲示板で意見交換した方が早い。

その代わりに、単に連絡と擦り合せだけを行うだけの担当者はいらなくなるかもしれません。でも、その人が擦り合せをやめて、その時間で他の仕事をできるようにすることが本当の生産性向上です。

もちろん、Excelのシートをメールでやりとりすることが、本質的に業務に添っているケースもあるでしょう。しかし、紙のイメージにとらわれている為に、本来は業務の流れに合わないのに無理にオフィスソフトとメールですませているケースが相当あると私は思います。オフィスとメールのパターンも上記の5種類のパターンと並列に置かれ、有力な選択肢であり続けると思いますが、唯一のパターンである必然性はありません。

どの企業も、非定型業務の為の選択肢をメール以外に2つか3つは持つべきだと思います。あれこれツールを使えと言っているのではなく、コミュニケーションのパターンを多様にすべきだということです。それによって、相当な生産性向上が可能になるはずです。

ちょうど、技術評論社のエンジニアリングマインドという連載記事で、これにちょっと関連する話題を取り上げているので、紹介しておきます。


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