こんな時に株買うバカって何なんでしょうね
連日のように株安のニュースが流れてますが、何円安、何ドル安と報道されているということは、一応、値がついてるんですよね。値がつくということは取引が成立してるということで、つまりこういう状況の中でも買う人がいるということです。
みんなが「暴落だ」「恐慌だ」「樹海だ」と言ってる中で、これから株が上がると思って株を買う人がいる、これって不思議だと思いませんか。
株を買うというのはいろんな意味があって、政策的な介入を期待して買う人とか何かもっと難しいことを考えて買う人とかいて、これから株価が上がると思っている人ばかりではないかもしれません。まあ、こういう状況だと特別なのかもしれませんが、基本的には株の取引というものは、「これから下がる」と思う人が売って、「これから上がる」と思う人が買うことで成立するわけです。
つまり、意見の不一致を前提としたシステムなんですね。世の中の人がみんな同じことを考えていたら、証券市場というものは成立しない。証券だけでなく、金融商品というものは、大なり小なりそういう性質があって、意見の不一致を前提としたシステムだと思います。
その意見の分かれ具合が「リスク」というもので、「儲からない」という人が多いほど「リスク」が高い商品であり、その分だけ利回りがいい、つまり、もし少数派が正しかったら少数派はたくさん儲けることができます。「リスク」を嫌うなら、上がるか下がるか意見が半々に近いものを選ぶことになり、安全な分だけ利回りが小さくなる。
ベンチャー企業への投資が「リスク」が高いのは、そういう会社は、他の人が認めないようなことを何かやってるからです。万が一成功して大きくなると、その新しいやり方を認める人が多くなり、「リスク」がだんだん低くなって普通の株になっていくわけです。
意見が違う所にもお金が回る仕組みがあることが、回り回って世の中全体の役に立つことがたくさんあります。意見が一致してからお金を回し人を回しているより、ずっと進化が早い。
政治というものは意見が一致してから世の中を動かすもので、経済は意見が一致しないまま世の中を動かすもの。両方あって適材適所で使いわけるのが一番いいというのが歴史の示す所。
単純に考えると、全ての物事についてなるべく全員の意見を一致させて、みんなが納得してから世の中を動かす方がいいように思えますが、それだと世の中が停滞してしまいます。
現状維持で動かないのならまだいいのですが、そのままを維持することは難しくて、たいてい「腐敗」という別の方向に変化する。「腐敗」を防ぎ本当の現状維持を貫けるシステムがあったら、それは考慮に値すると思いますが、そんなシステムはありません。選べるのは、「腐敗」か「進化」という選択肢で、「進化」を選ぶには意見が一致しないまま世の中を動かせる仕組みが必要で、それが資本主義経済ということだと思います。
もし今が底値だったら、風潮に逆らって今安値で株を買っている人は大儲けすることになります。そういうチャレンジャーがいることは世の中全体にとってとてもいいことです。「今が底」という意見に同意する必要はありませんが、「今が底」という意見を持ち自分の金をそこにつぎこむ人がいることが、社会の為に必要であるという認識が必要です。
景気の波は必ず循環するものですが、そういうチャレンジャーがいることによって、その波が滑らかになり、より少いダメージで回復することができるからです。
ブログで自分と全く違う意見を書いている人を見るとムカっとしてしまいますが、それと同じように「こんな時に株買う奴ってバカじゃねえの」と言いたくなります。
でも、資本主義経済というのは、そういうバカを野放しにすることによって成立するシステムです。好況の時も不況の時も、バカが一定量いないとうまく回らないシステムです。
「自分と違う意見の人がいることの効用」「全員の意見を一致させないことの重要性」といったことを、こういう時期だからこそ考えてみるのもいいと思います。
どんなに暴落しても値がついている限り逆張りしてるバカがいるわけで、そういう人にとってはこれはチャンスなんです。株だけではなくて、給料や土地が下がることも「チャンス」と見て凄い勢いで動き出す人がいたりするわけです。そういうふうに変な見方をする人がいるってことが何となく頭に来てしまいますが、見方を変えて世界中全ての人が悲嘆にくれて絶望しているわけでは無いって思うと、何となく気持ちが明るくなりませんか?