公開できない「暗部」のある組織はもうもたない、でもそれだけのこと

新聞紙が売れなくなってしまって、
ネットメディアを収益の柱にしようとしていたのに、
ネットユーザーによって、売り上げを完全に止められてしまってるわけです。

しかも、これがいつ終わるのかというと、
誰も知らない。
誰に聞けばいいのかわからないし、
誰を説得すればいいのかもわからない。

特定のリーダーがいない組織との争いの
経験がある人は少ないですからねぇ。。。

んでも、こういったゲリラ戦に対処しなきゃいけない時代なんですよね。

これを書いている方は、「ネットは怖い」というイメージを強調したい人なのかもしれませんが、私はちょっと違うと思います。

同社は6月23日、同コーナーを中止・削除し、監督責任者や担当者らを処分すると発表したが、25日の株主総会で、それまでの常務デジタルメディア担当が社長に、同デジタルメディア局長も取締役に昇格する人事を可決・承認(27日に役員報酬の一部返上を発表)。これがネット上の炎上に油を注ぐ格好となり、毎日新聞社のほか、毎日新聞および毎日jpに広告を載せている大口の広告主へも抗議、問い合わせが電話やメールで寄せられることとなった。

問題を起こした部署の担当役員が社長に出世するという「処分」が火に油を注いだわけで、これが無ければ、ここまで大きな騒動にはならなかったでしょう。

この問題に怒ってチラシを配るとかしている人と、毎日新聞社内部の意識にはかなり大きなズレがあります。

それは「ジャーナリズム、あるいはクオリティペイパーというものが果たす役割をどれだけ大きく見ているか」ということ。

毎日新聞の内部では、「真実の報道」とか「立場を超えた正論」とか「信頼できる取材プロセス」ということをそれほど重んじてない。彼らにとって新聞は商売なんだと思います。

ところが世の中には、そういうふうには考えない人も多かったようです。「低俗な真偽不明の情報を、タブロイド紙や週刊誌が流すのは問題ないけど、大手新聞社が同じことをやることは許されない」と、新聞というものに高い期待を持っている人が多かった。

「新聞と言っても単なるメディアの一つであって、ブログや掲示板や雑誌とそんなに違いはない」最初からそう思っていたら、そこまで怒る気にはならないでしょう。

私は最初、「またか」と思ってそれほど興味を持たなかったのですが、このエントリを見て「深刻な実害を受けている人もいるんだな」とちょっと認識を改めました。ただ、運動をするなら「日本の新聞を海外のクオリティペイパーと同じレベルで考えちゃいけないよ」という注意喚起を海外に広く呼びかける方が本筋じゃないかと思います。

そういう意味では、「これくらいのことで騒ぐな」と思ってる毎日新聞社の人に近い意見です。「真実の報道」とか「立場を超えた正論」とか「信頼できる取材プロセス」とかと新聞は何も関係ない。そんなこともわからない人たちに頭を下げて謝罪したり、せっかく決まっていた人事を動かしたくない、そういう気持ちも多少はわかる。

ブログを信じることにも、新聞を信じることにも、どちらにも同じリスクがあって、どちらのリスクも自己責任。両者を区別する必要はない。新聞が嘘を書いてそれを信じた人がいたとしたって、信じる方が悪いんです。

ただ、「新聞は特別だ」と思っている人、新聞に高い期待を持っている人は、本来、新聞社にとってはいいお客さんになるはずの人だと思います。私のようにブログと新聞が同じと思っている人間や、この騒動を批判的に見ている人よりは、有望な潜在顧客であるはずです。

あの「処分」はそういう潜在顧客にケンカを売ったようもので、潜在顧客層とケンカしたら、どんな会社だって傾きます。

でも、それはあまりネットには関係ないんじゃないかな。ちょっとひろゆきさんという方は、ネットの影響力を過大視し過ぎていると思う。

毎日新聞と、潜在顧客層の間にはもともと隔りがあったんです。ネットはそのギャップを明らかにしただけ、それ以上でもそれ以下でもない。

新聞というものは最初から、「真実の報道」とか「立場を超えた正論」とか「信頼できる取材プロセス」なんてことは気にとめていません。そして、それは今に始まったことではないし、毎日新聞に限ったことではないし、「WaiWai」の問題がその典型とも言えない。

たとえば、拉致被害者曽我ひとみさんの北朝鮮に住む家族の住所を朝日新聞が報じた問題。

これに、家族会は7つの質問を投げかけてますが、その冒頭にあるのがこれ。

  • 住所を盗み見した記者の氏名と、同記者が朝鮮語を解読できるのかどうか。
  • 調査では住所を原稿に書いたのは同記者としているが、朝鮮語の翻訳などを手伝った社内の人間がいたのかどうか。

なお、私たちは上記1と2に答えられない理由が、18日付け調査結果で、 「東京のデスクらには、この住所にかかわる部分が本紙記者による独自取材の結果という意識はなく、発表された情報をそのまま書いたと思いこんだ。」と主張していることが嘘だと露呈するからではないか、と疑っていることを申し添えておく。

結局、この質問に対する回答はありませんでした。

朝日新聞の調査結果には嘘があったわけです。一記者の暴走ではなくて、デスクも承知していて組織的に意図的に重大な報道被害を起こした。

そして、嘘の含まれる「調査結果」を出して謝罪して、暗にそこを指摘している質問は無視。

新聞っていうのは、そうまでして守らなければいけない何かを持っている組織なんです。

もちろん、記者の中には違う考えの人もいるかもしれません。でも、朝日新聞毎日新聞を一つの組織として見る時には、こういう所からその姿勢を判断するべきでしょう。

新聞は、外から見ててもよくわからない特定の人たちの利益を第一に考えて行動する組織です。その次に商売が来て、その次に潜在顧客に間違ったイメージを持たせることを考える。口先だけの謝罪ならともかく、人事の中でその優先順位を変えることはできません。

ネットがそこを明らかにしつつあるのは確かだけど、怒っている人たちの中心はコアなネットユーザではないでしょう。

潜在的な新聞の優良顧客層が怒っているだけです。

自社の潜在的な優良顧客層を騙している会社でなければ、別にネットを恐れる必要はないし、過剰に身構える必要はありません。

顧客を騙して商売している会社は、謝罪する時にどうしても矛盾だらけの謎の弁明をする。何かずれた「処分」をしたり、重要なポイントをスルーしようとする。ネットユーザはそれを面白がります。まあ実際、面白いと思います。私もそういうネタでアクセス数を増やしている部分もあると思います。

それはネタとして消費されやすいものですが、それだけに、一気に広がってすぐに他に流れる、王蟲の群れの襲来と同じです。

間違って王蟲に襲撃されてしまっても、王蟲が去った後に村を再建できれば、そんなに大したことにはならない。

今回の騒動で、日本中のスーパーにバラまかれたチラシを広告費に換算したらいったいいくらになるのでしょうか。

たとえば、毎日新聞の中で、「真実の報道」とか「立場を超えた正論」とか「信頼できる取材プロセス」に重きを置く人が、内部告発して、その勢いで分裂して新しい新聞を立ち上げたとします。そしたら、その新しい新聞にとって、日本中のスーパーにバラまかれたチラシは、そのままで無料で使える広告媒体として機能します。今回怒っている人は、みんなその新聞を読むでしょう。

王蟲の群れは、あり得ないくらいの膨大なアテンションを集めてくれます。顧客を騙してなければ、そのアテンションの使いようはいくらでもあります。

でも、騙している会社にとっては、王蟲の被害は深刻です。王蟲が去った後に自分たちの王国が腐海になってしまい、再建することができないからです。

ひろゆきさんという方は、日本の会社はほとんど顧客を騙して商売していると思っているのでしょう。その前提が正しければ、彼の言う通りです。騙されていた顧客が一斉に怒り出してゲリラ戦を始めたら収集がつきません。

そういう会社もたまにはあるので、面白い見世物はこれからも見物できると思います。たとえばこのへん。

でも、それを「ネットの影響力」とか「ゲリラ戦」とか言って、よく知らない人をビビらせるのはちょっと違う気がします。普通の会社にとっては、不二家のケースのようなテレビの暴走の方がよっぽど恐い。

顧客とまっすぐに向きあって、真面目に商売している会社にとっては、ネットの影響力なんてほとんどありません。CMSの使い方くらいは覚える必要があるかもしれませんが、商売のやり方を変える必要はありません。

世の中の組織の大半が、公開できない「暗部」を持っているという思いこみを、ひろゆきさんという人は、何で持ってしまったんでしょうね。彼は、何かそういう情報が集まる特別な情報源でも持っている人なんでしょうか?

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