GlobalVoicesの中の人に会って来ました

このたび、GlobalVoicesの日本チームの作業をちょっとだけお手伝いさせていただくことになり、日本語版Editor(編集者)のクリス・サルツバーグさんと鴇田花子さんから、いろいろお話を聞く機会がありました。

せっかくなので、お聞きした内容も含めてGlobalVoicesの紹介をしたいと思います。

GlobalVoicesとは

GlobalVoicesとは、世界中のさまざまな言語で書かれたブログを他の言語に翻訳して、相互に紹介していくサイトです。朝日新聞でも紹介されています。

各国語から英語に翻訳したメインのサイトと、その英語に翻訳された記事からさらに別の言語に翻訳して紹介する各国語別のサイトから成り立っています。

現在は、主にサルツバーグさんと鴇田さんのお二人が、日本語担当のスタッフとして、日本語ブログの翻訳、紹介と、メインサイトの英語記事の日本語への翻訳を担当しています。

日本から世界へ

たとえば、次のエントリは、鴇田さんが、ベーベ工房の牛とチーズの千夜一夜というブログのバター不足についてというエントリを翻訳し紹介したものです。

これは反響が大きかったらしく、この英語のエントリから、さらに次の7カ国語に翻訳されました。"This post is also available in:"という所に、各翻訳版へのリンクがあります。

日本語版はこちらです。

英語のエントリが全て翻訳されるわけではなく、各ローカルのエディタの判断で選択されるそうですが、このように、日本語のブログが英語圏で読まれるだけでなく、そこからさらに別の言語の国で、日本語はもちろん英語も読めない人にも読まれることになります。

この記事の場合は、BBCからも取材が来たそうです。

このブロガーのベーベ工房さんは、後日、次のような感想を書かれています。

実は、このブログのエントリもとりあげていただいたことがあります。

これは、次の言語に翻訳されました。

自分の書いた文章を、自分が全く知らない言葉を話す人に読んでもらえるというのは、何とも言えない貴重な体験だと感じました。

私の場合、ごくマイナーなものですがオープンソースソフトウエアの開発もしているので、英語圏の人とのメールのやりとりの経験はあります。だから、英語への翻訳は広い意味では既に経験したことの延長だったのですが(もちろんそれでもすごくビックリしましたけど)、そこからさらに自分が全く知らない言語に翻訳されていくというのが、根本的に新しい経験であり、ずっと大きな衝撃でした。

世界から日本へ

メインサイトから日本語への翻訳としては、たとえば、次のような記事があります。

この中に、エクアドルの人がスペイン語で書いたブログがいくつか紹介されています。

右サイドバーにカテゴリや国の選択があって、たとえば「インターネット・通信」を選択すると次のリンクが表示されます。

こちらには、こんな記事がありました。

私の家族や友人が読んでいるということに気付くまで、私のブログはうまくいっていた。そして私は以前のように書けなくなってしまった。今では違和感があり、誰も知らない隠れた人間だったらいいのにと思ってしまう。私が言うことすべてが悪く取られてしまう気がするようになった。

これに共感する人は多いと思います。「なんという俺!」とか思ってしまう人もいるかもしれません。

「エジプトの人が書いた記事」というより「ああ、ブログを書いてると似たようなことを感じている人が多いんだなあ」という印象が強いですよね。

普通、どういうメディアであっても、あまりよく知られてない国についての情報は、教科書的というかトップダウンというか建前中心というか、そういう情報が先にあって、普通の人が普通に生活している中での実感みたいなものは、もう一歩か二歩深入りしないと知ることはできません。

でも、当然ですが、大半の人にとって、政治や経済や重大な社会問題の前に毎日の生活があるわけです。人々の、そういう等身大の姿を見ることができる貴重なメディアではないかと思います。

ヘルプスタッフ募集

それで、エディターのお二人は、日本のブログの中に自然と表現されている等身大の日本を、なるべくそのままの形で紹介していきたいと考えられているそうです。

鴇田さんは「外国の人が日本を見る目は、アニメや漫画等のオタクカルチャーとか、従軍慰安婦のような政治問題に集中しているように感じます。もっと普通の日本、日本人の普通の姿を知ってほしいと思う」と言っていました。

「日本人で英語のブログを書いている人もたくさんいます。でも、それは日本のブログ、日本語のブログの世界とは全然違う世界になってしまっている。でも、日本語を知らない人が日本に興味を持っても、見えてくるのは前者のみです」サルツバーグさんは、そんな懸念を漏らしていました。

ただ、その為にはスタッフが足りないと感じているそうです。

単純な量の問題としてももっとたくさんの記事を紹介したいし、自分たちの選択が偏ってないか、自分たちの視野の外に、もっと良いブログがあるのではないか、そういうことに悩みながらやっている、たとえば、2ちゃんねるについて、特にいい面をもっと紹介したいけど、どのあたりの注目していいものかわからないとおっしゃってました。

特に、紹介すべき記事の選択や、日本語による紹介記事の作成を手伝ってくれる人が欲しいという話です。個人の視点にはどうやっても限界があって、それは仕方ないことだけど、別の観点に立つ人と一緒にやれば、ずっと幅広い範囲からピックアップすべき記事を集めることができるだろうと。

それと、日本語サイトも充実させて行きたいので、英語から日本語への翻訳が出来る人も求めているそうです。

現在、私の方で、Global Voices日本語チーム用のコラボレーション用サイトを準備しています*1。ヘルプスタッフの方には、このサイト内で情報の提供や翻訳ををしていただこうと思っています。

このプライベートなサイトの中での作業の結果を元に、エディターのお二人がGlobal Voicesに記事をアップしていくことになります。もちろん英語が得意な方は、Global Voicesの正式のAuthor(執筆者)になって、直接記事を書いていただくという道もあります。

英語力の有無に関わらず、それぞれの得意分野や使える時間に応じて、手伝っていただける部分がたくさんあると思いますので、Global Voicesの活動に興味がある人は、essa(tnaka (at) dc4.so-net.ne.jp)か、japanese (at) globalvoicesonline (dot) org までメールください。

これまで個人ベースでやってきたので、分担の仕方もコラボレーションの方法も、全部試行錯誤しながら一緒に考えていくことになると思います。今参加していただけたら、そういうコラボレーションを一緒に立ち上げていくという楽しみもあると思います。

おまけ

Global Voicesの日本語サイトに載せる記事は、直訳で注釈を入れないことになっているそうです。Global voices全体のポリシーとして、どの言語の記事も内容を同一にしておきたいからです。

このポリシーの必要性も理解できるけど、その為に、日本語サイトが固い印象でとっつきにくい感じになってしまうことが悩みのタネだと、サルツバーグさんは言っていました。

そのとおりだと思うのですが、そういう微妙な所まで日本人の感じ方を理解してるってすごいなあと思いました。

長期的にはこのポリシーを見直して、各国語別のコンテンツとしていくような検討も必要かもしれませんね、と言うと、サルツバーグさんは「そのグローバル・ボイス日本語版の『背景説明のない文章』をもっとわかりやすくするために、読者が興味のある日本語版の文章を自分のブログで紹介して、自分の生活とつなげて、リンクしていただければ、もっとその外国のブロガーの情報が広がると思います。それがすごく大切な、私達二人ではできない役目だと思います」とも言っていました。

確かに、本家をアレンジするより、その回りのブロゴスフィア全体として解決していくような発想の方が、ブログ的かもしれませんね。

それから、サルツバーグさんは、「世間」というコンセプトに興味を持っていて、はてなでこんなエントリを書いています。

ここで言及している次の記事は、自分としてはけっこう面白い記事になったという自信があったけど、予想した程は反響がなくて少しガッカリしたそうです。

サルツバーグさんはカナダ・モントリオール出身なのですが、「アメリカ人のスタッフは、言語の壁のことは考えても文化の違い、文化の壁のことを全く理解してない。そういう人たちに『世間』という話はなかなか理解されない」とちょっとぼやいていました。

私も、「世間」については次のエントリとかいろいろ考えているので、結構、話が盛り上りました。

一日一チベットリンク四川大地震で報道される地域と報道されない地域 - Baatarismの溜息通信

これは気になりますよね。被災状況の地図で震源地がまん中に無いのはおかしいと思う。

*1:ツールとしてはredmineGoogle Sitesを使用する予定です