YouTubeが信長ならJoostは家康か

これは、要するに「キレイなYouTube」ですね。

「キレイ」というのは、画面がキレイであることと、著作権的にキレイであること。

Skypeと同様のP2Pネットワークを利用しているとはいえ、Joostは配信コンテンツを投入できるサーバ群を中心に、その周囲にP2Pネットワークが広がるというハイブリッドなトポロジーとなっている。配信サーバからのみコンテンツを提供することで著作権保護対策を行っていることも、多くのコンテンツプロバイダからの支持を得ている理由だ。

「支持」っていうのは「YouTubeよりはマシだ」という消極的な意味しかないと思うけど、その意味が大きい。

実にうまい立ち位置を見つけたものだと思う。YouTubeが元気になればなるほど、追い立てられてたまらずJoostの所に逃げ出してくるコンテンツプロバイダーが増えるから、ただ待っているだけで、どんどんコンテンツが増えていく。

中世的権力は家康のことを「信長よりはマシだ」と思っただろうけど、家康は名目はともかく実態としては完全な中央集権を敷くことに成功し、旧体制はほとんどなくなったに等しい。結局、内政面においては家康は信長の完全な後継者なんだけど、大半の人が信長的改革の緩和剤として受け止めた。

それと同じことが起こるのではないだろうか。

P2Pネットワークでは、人気のあるコンテンツほど広範囲にキャッシュされる。そのため新着のスポーツ番組や、先週のドラマといったものであれば、身近なP2Pノードにキャッシュされている確率が高い。一方、連続ドラマの第1回目や人気のないコンテンツ、つまりロング・テールの部分はP2Pネットワーク上にキャッシュされていないため、クライアントから直接サーバに接続しに行くことになる。

技術的にも、これは実に納得のいくアーキテクチャーである。

友人数人だけが見る投稿ビデオから、ワールドカップ決勝レベルの集中アクセスまでシームレスに、コンテンツをテールからヘッドまで移動できる。最初はヘッド中心にやるようだけど、いずれテールにも手を出すだろう。

透明ウィジェットというのは、ニコニコ動画のような楽しみ方がもっといろいろな形でできるということであり、アイディア一発で草の根的なイノベーションが起こる余地がたくさんある。

まさに磐石の布陣である。

桶狭間関ヶ原と大阪の陣が同時多発的に発生している21世紀には、さすがに秀吉が出てくる時間はなくて、信長の次はいきなり決定版の家康が出て来たみたいだ。