iPhoneのAPIが次世代のHTMLでApp Storeが次世代のHTTPだ
インターネットとは、技術的に言えば世界規模で張り巡らされたIPネットワーク網のことだが、パソコンの「インターネット」というアイコンをクリックすると、Webブラウザというソフトが立ちあがる。
IPネットワーク網が何であるか理解できるのはごく一部の人だけであり、適切なUI(ユーザインターフェース)を与える必要がある。Webブラウザができて初めて一般の人がインターネットとは何であるか理解したので、そのソフトウエアに「インターネット」という愛称を与えることは自然である。
Webブラウザが「インターネット」であったのと同じような意味で、iPhoneは「インターネット」になるだろう。
iPhoneは、もう一つの、一般の人にも使えるインターネットのUIである。Webブラウザによって世界規模で張り巡らされたIPネットワーク網の使い道が広がったのと同じレベルで、iPhoneによってもう一段階「インターネット」が進化するだろう。
IPネットワーク網は非常に汎用的であるので、それに対するUIも汎用的でなくてはならない。汎用的であり、一般の人にも使えるようにわかりやすく安全でなければならない。
その為には、クライアントが固定的な顔を持っていてはいけない。顔のパーツはあらかじめ用意してあるが、表情はネットの向こう側から飛んでくる。
WEBブラウザは、HTMLという表情を記述する為の言語を解釈するソフトだ。そして、その表情を作る為のデータは、ネットの向こう側に用意されていて、HTTPというプロトコルで飛んでくる。WEBブラウザは、HTMLとHTTPによって汎用的なUIの為の基盤となった。
iPhoneもこれと同じような意味で、ネットの向こう側に用意されたUIを実行する機械だ。
ただしこのUIは、iPhoneAPI という言語で記述され、App Store というプロトコルで飛んでくる。iPhoneAPI は言語ではなく、App Store はプロトコルではないが、HTMLとHTTPの後継者だ。一般の人が使えるUIを記述し転送する為の体系だ。
ブラウザは、入出力デバイスとして、マウスとキーボードとビットマップディスプレイを接続して使う。
マウスとキーボードとビットマップディスプレイが、世界規模で張り巡らされたIPネットワーク網に接続された時に、一つの革命が起きた。
GPSとカメラとマイクが、世界規模で張り巡らされたIPネットワーク網に接続された時に、もう一つの革命が起きる。
第一の革命 | 第二の革命 | |
---|---|---|
UI | Webブラウザ | iPhone |
入出力装置 | マウスとキーボードとビットマップディスプレイ | GPSとカメラとマイク |
UI記述言語 | HTML | iPhone API |
UI転送プロトコル | HTTP | App Store |
パラダイム | Pull方式の「インターネット」 | Push方式の「インターネット」 |
これまでは、Webブラウザの所に人がやってきて、こちら側の人の要求に従って、データが送られてきた。Pull方式の「インターネット」だ。
これからは、人が行く所にiPhoneがついていって、ネットのむこう側にいる人のアクションをトリガーとして、こちら側にデータが送られてくる。Push方式の「インターネット」だ。Pull方式も併用できるが、新しい応用は主としてPushから生まれるだろう。
Webブラウザが何であるか、1991年に判断すべきではないのと同じように、iPhoneが何であるか今判断すべきではない。
しかし、世界規模で張り巡らされたIPネットワーク網が一般の人にも使えるUIを持った時に何が起こるかは、歴史から知ることができる。