アナーキーになるセカンドライフとグーグルアースによる町おこし

原文までは読んでないけど、グーグルアースがセカンドライフになるらしい。つまり、グーグルアース内をアバターで行ったり来たりして、他の人と会話したり、仮想オブジェクトを取引したり、その他いろいろなこと、セカンドライフ内で行なわれているようなことができるようになるらしい。

今後1−2年後か2−3年後に始まると思われる新しい時代に備えてリンデンラボも焦っているようです。だから今年に入ってセカンドライフ・サーバーソフトのソースコードのオープン・ソース・ソフトウエア化を提唱している訳ですね。

これは簡単に言えば、パソコン通信からWEBへの進化と同じことを3D仮想空間システムにも起こして、その変化のスピードによってグーグルの物量に対抗しようという戦略ではないかと思われる。

現在のセカンドライフは、リンデンラボによって管理された空間である。内部の町や建物やイベントはほとんどがユーザ主導で作られているが、仮想空間そのものはリンデンラボが取り仕切っている。ちょうど、パソコン通信で、フォーラムの管理はシスオペと呼ばれる管理者に管理を委託されていたけど、インフラの提供やアカウントの総括的な管理等は、niftypc-van等のベンダーが行なっていたことと同じである。

そういう「管理された仮想空間」という土俵で、グーグルと直接対決したらリンデンラボも苦しい。

そこで、「管理されない仮想空間」という別の土俵を創り出し、そちらで勝負しようということだ。

誰でもセカンドライフのサーバを運用することができるようになる。つまり、セカンドライフ内で「島」がほぼ無尽蔵に供給されることになる。そして、「島」同士の相互接続は、それぞれの「島」のオーナーの合意で自由に行なわれるようになる。自宅サーバと同じように自宅で「島」を運用することも可能になるだろう。

nitty-serveのサーバはnifty一社が提供していたが、WEBのサーバは誰でも自由に運用できて、お互いにリンクすることが自由にできることと同じである。

私は、セカンドライフはやったことがないので、詳細はよくわからないが、リンデンラボが起こそうとしている次の変化、セカンドライフの脱出先は、この「パソコン通信からWEBへ」というアナロジーで読めば間違いないと思う。

それをすれば、情報の供給量やサービスの多様性が格段に上がり、その代わりにこれまでよりずっとアナーキーな世界になる。良くも悪くもYouTubeMy Space のような爆発力を秘めたものになるだろう。

グーグルは、これと対抗する為に、管理されている空間の安心感を強調するような方向性になるのではないかと思う。つまり、現在のセカンドライフから、全く正反対の方向へ、二つの未来が分岐するということだ。

そして、ここからが本題なのだけど、もし、グーグルが「こちらはむこうより管理されていて安心でわかりやすいですよ」というアピールを行なうとしたら、グーグルアース内の仮想空間は、リアルの地図と非常に密接につながったものとして運営されるだろう。

つまり、リアルの土地の権利者が、仮想空間上でそこに対応する部分の権利者になる、ということ。

グーグルアースは地図と衛星写真から作られているものだから、その中の空間にはリアルと連動した住所がある。東京もあるし銀座もあるし、日本で一番地価が高い銀座4丁目交差点前もある。そして、仮想空間として、その内に自由に3Dの物体を配置できるようになっている。だから、グーグルは、その空間の中では、銀座4丁目交差点にタダでビルをたてることができる。そして、その権利を販売するなり賃貸するなり贈与するなり好きにできる。

グーグルは、この仮想空間内の「銀座4丁目交差点前」やその他世界中のあらゆる土地を、どういうふうに分譲してもいいのだけど、普通にやったのでは現在の(ということは、将来の競争においては一世代前の)セカンドライフと同じものになってしまう。

そこで私は予想するのだけど、将来のオープンソース化していて非常にアナーキーになっているセカンドライフと対抗するには、リアルで銀座4丁目交差点を所有している人にその権利を渡してしまった方がかえって面白いのではないだろうか。

リアルの地面を持っている人は、それに対応するグーグルアース内の仮想空間に好きなオブジェクトを配置できる。配置する権利を託す人を自分の意思で決定できる。

このルールを決めると、ユーザには非常に明解で使いやすくなる。たとえば、読売ジャイアンツに関する情報を知りたいと思ったら、グーグルアース内の東京ドームへ行けばよい。グーグルアース内の東京ドームで(リアル試合の)チケットが変えるとしたら、そこは読売巨人軍売店か少なくとも委託した信頼できる業者だから、安心して買うことができる。

これは未確認だけど、現在のセカンドライフ内では、フィッシングのようなことが可能だと思う。つまり、実在する企業の偽の支店をセカンドライフ内に作り、嘘のメールで「○○銀行ですが、セカンドライフ支店を開設しました。こちらをクリック」みたいな感じで、ユーザを騙してそこへ誘うという犯罪だ。

犯罪まで行けば取締ることも可能だし取締るしかないけど、その一歩手前みたいなことがあちこちにあってそれを自己責任で判断しなくてはならないとしたら、ユーザの負担は大きい。

そこで、「グーグルアース内の仮想空間はリアルの土地登記簿と連動する」という決定がされれば、非常に安心感があるだろう。

それでは逆に不自由すぎるしオールドプレイヤーに有利すぎて面白くないという意見もあるかもしれないが、リアルの原野か山林を借りることができれば、グーグルアース内のその土地によって、アイディア次第で何か面白いことをして人を集めることは可能である。

むしろ、何の産業もなく衰退していく一方の地方の小さな村は、競って村有林を提供し、そこに何か面白いことをしようと考えている人を誘致することになるだろう。有望なベンチャー企業や話題のアーチストのグーグルアース支店が集った地域ができれば、グーグルアース内のその地域の賑いが、何らかの形でリアルに波及するのではないかと思われる。

つまり、アイディアと実行力次第では、グーグルアースによる町おこしが可能になるということだ。