Public space(Google) VS Private spaces(MS,Facebook)

Facebookの急成長とマイクロソフトのYahoo買収宣言は、グーグルの歴史の中で一つの分水嶺になると思う。

そう考えると、(偶然だと思うけど)ちょうどこの時期に、Open Social APIが発表されたことの意義は大きい。

つまり、これは、WEBというpublic spaceを便利にする人(グーグル)と、private spaceを便利にする人(Facebookマイクロソフト)が正面衝突したということだ。

WEB上にあるものは、誰にでもアクセスできる。WEBは誰にでも開かれた場所だ。publicな場所がどんどん便利になっていくことが、WEBの歴史であり、同時にグーグルの歴史でもある。

ドキュメントをpublic spaceに置くと、タダで検索できるようになる。private spaceに置いたら、自前で検索エンジンを用意しなくてはならない。RSSリーダもそうで、publicなフィードは、WEB式のリーダをタダで利用できるが、privateなフィードは、自前でRSSリーダを用意する必要がある。

そういう大げさなものではなくて、PDFなんかも、publicにすれば、ぱらぱら見れるビューアーを作ってくれるようになっているらしい。

情報をpublicにすれば、タダでいろんなことができる。publicな場所がこうやって便利になっていくと、検索エンジンの価値が上がり、グーグルの価値も上がる。

Facebookマイクロソフトは、検索エンジンクローラーの届かない所に、価値ある情報を集めようとしている。publicでない所が便利になれば、この両社の価値が上がり、グーグルの価値は相対的に下がる。

だから、Public space と Private spacesが情報の取り合いをしているのだろう。

Open Social APIは、publicな場所をさらにもう一歩便利にしようとする試みだ。

長期的には、これによって採用とか人事評価のような人の評価が楽になるだろう。

たとえば、プログラマを採用する時、その人のプロフィールのURLを入力すると、次のような情報が一覧表示される

  • 彼が関係したオープンソースソフトウエアとそのプロジェクトの中での彼の役割、成果物
  • 彼の書いたブログで多くのトラックバックやブックマークを集めたもの
  • 彼の「友人」で有名な人やすごい人
  • 彼について言及しているブログ記事

現在は、評価する側も技術的な知識がないと、こういう情報を正しく評価することは難しいと思うが、それがもっと楽になるのだ。

グーグル以前、ブログ以前には、WEBから良質な情報を集めることは、その情報に詳しい人でないとできなかった。しかし、今は、ページランクやブックマーク数や有名ブログからの言及を頼りに、あまり詳しくない分野でもそれなりに情報の選別ができる。全くの予備知識なしでは難しいと思うが、情報を選別する為に必要な知識レベルは下がっている。

それだけ、public spaceが便利になっているのだ。

人の評価も同様で、全くの素人が機械に頼って一発でできるというのは夢物語だが、評価する側に多少の知識や経験があれば、Open Social API(を使うツール群)を活用することで、自分以上のレベルの人を妥当なコストで正しく評価できるようになるだろう。

もしそうなれば、プログラマをたくさん抱える会社では、社員にブログを書かせて、それを人事評価の参考にするだろう。

多くの人が参考にするような解説記事を書ける人間であれば、将来性を認めて、現状の働き以上の給料を払っていても割にあう。

そうやって、public space に情報が出てくることで、グーグルの価値は高まる。だから、グーグルは、あの手この手で public space をもっと便利にしようとする。

たとえば、営業活動そのものをpublic に引っぱり出すことは無理だろうが、営業マンの人脈ならできるかもしれない。マイミク的な情報をうまく活用して一工夫すればできるような気がするが、人脈は量ではなくて質も重要だろうから難しいかもしれない。そういう困難な所を、グーグルが技術力と腕力とマシンパワーで解決できたら、営業マンの人脈情報がpublicな領域に出てくる。

Open Social API はその第一歩だと思う。これがどのように展開するかは予想できない。

もしグーグルにそれができなかったら、営業マンの人脈に関する情報は、FacebookSNSの中か、MSのOSで動く企業内のシステムの中に閉じこめられることになる。

検索エンジンがクロールするドキュメント、プログラマの書くオープンソースソフトウエア、営業マンの人脈情報というのはほんの一例だ。ありとあらゆる職種のありとあらゆる情報について、グーグルとFacebook,マイクロソフトが、自分の側に引きこむ為の研究開発を競争で行なっているのだ。