書記2.0、構造化議事録、会議労働者の生産性計測と知識労働のネットワーク化

これは大変な労作だ。全体として示されている未来像には若干異論があるが、個々のディテールには多いに感心し、納得させられた。特に、会議が全て動画で記録され、テキスト化され、画像認識技術を応用したインデクスまで自動的に付与されるという話。

これで思い出したのが、この講演録一発で、「ウェブ進化論」出版記念イベントの出席切符を手にした、id:pekeqさんのこと。

私が、、たくさんのエントリーを書いてようやく手にした切符を、id:pekeqさんは講演録一発で入手してしまったことになる。正直言ってちょっとズルいと思った。

でもこの講演録は私も多いに刺激を受けたし、インスパイアーされて「適切な質問」を探す新人たちというエントリーを書いている。即日アップしたとは思えないほど密度の濃い内容だと思う。問題のイベントの議事録も臨場感を失なわないで重要な発言やキーワードがしっかり網羅されている。


もし、私がそのイベントの企画者で、人数の制限からessaとpekeqさんのどちらか一名しか出席できないとしたらどうするだろうか。もちろん、そうなったら文句なくpekeqさんを選ぶ。pekeqさんが議事録を書けば、essaはそれを読んで何かを書くだろう。当日呼んでやったってpekeqさんの議事録から書いたって、どうせ奴の書くものは同じくらい変だ。しかし、pekeqさんのフラットでありながら臨場感のある議事録は、多くのトラックバックを生むだろう。

というか、このエントリを書きながら気がついたけど、

あと、去年の9月に「フォーサイト」誌主催の講演会を東京でやったときに、会場で詳細なメモ(http://d.hatena.ne.jp/pekeq/20050916/p1)を取って、その晩のうちにブログでその内容をアップしたid:pekeqさんは、もしご都合がよろしければ特別枠でご招待しますので、同サイトのフォームから申し込んでください。本イベントでも、同じようにやってくださってOKです。

これは、実績のあるよい書記を確保する手段だろう。このイベントは、当日のみで完結するものではなくて、ブログ上での議論に発展させたいとおっしゃっていたので、梅田さんは書記の重要性をはっきり認識していて、こういう枠を作ったのかもしれない。20万部のタネは多くのアルファブロガーだが、そのタネは議事録である。優秀な書記がいなかったら、波及効果の出元が詰まってここまで拡大しなかったかも。

2026年までに、書記は、音声の自動テキストや動画からのテキスト認識、話者自動認識等、高度なIT技術に支援されて、構造化された議事録を作るようになるだろう。あるいは、そこに、機械仕掛けのトルコ人も加わるかもしれない。その時、凡庸な新人が残す議事録とid:pekeqさんのような方が残す議事録には大きな違いがある。

おそらく、将来の議事録は、きれいに構造化、アウトライン化されていて、トップダウンで必要な所だけ流し読みすることもできるし、要所要所を詳しく調べることもできる。そして、必要なだけ、音声や動画で生の発言へのリンクを参照することも自由自在にできるだろう。だから、

  • 議事録のコンテンツとしての価値と「書記」という才能の有用さに対する認識が深まる
  • 会議は参照し評価することが容易になる(組織内で参加者の上のレベルからも下のレベルからも)
  • 参加者の発言は出席者以外の多くの人から評価されるようになる

その結果、id:fromdusktildawnさんが言うように、会議という労働における生産性はこれまでとは比較にならない精度で計測されるようになり、その結果、会議労働者における生産性の極端な違いが白日のもとにさらされる。そこまでは同意する。

しかし、それが単純な二極化につながるとは限らないと私は思う。

会議労働者の選別が進めば、有用な会議も明確になり、そこには優秀な書記が動員され多くのリソースが投入される。書記だけでなく、翻訳、二次編集、評価など多彩な知識労働が必要とされるのではないだろうか。

一般に知識労働は、動的で不定形だ。そして、そこにはネットワークが形成される。だから、二極化でなく、ダイナミックな相互依存が進むと私は思う。