梅田さんのブログのアクセスが一日100件だった頃

最初からその種がない人にはまったく届かないと徳保さんは主張していると読んだんだけど、今伝わらなくても、1年後、下手すれば数十年後に伝わるかもしれない。「今」「現在」伝わらない言葉しか価値がない訳ではないのだ。

ネット時代はスピードが速いから、すぐ効果が出ない言葉に対して、冷淡になりがちだけど、じわじわと染みる言葉というのも重要だと思います。

「じわじわと染みる言葉」とはちょっと違うかもしれないけど、伝わるのに時間がかかった言葉として、ひとつ心あたりがあります。

capsctldaysさんが梅田さんからリンクされたけど、本日のリンク元の数字では今現在50件行ってない。 あれだけの内容があってCNETというブランドもあってそんなもんかな?リンク先まで見ない人も多いんだろうけど、それにしても少なすぎ。

今をトキメク梅田望夫氏ですが、三年前には「知る人ぞ知る」という感じで、そのリンク先へのアクセスは一日50件しかなかったという話。「英語で読むITトレンド」本体にはどれだけ来てたのかわかりませんが、大きく見て500件くらいでしょうか。

本当の意味で外に好奇心が向いてないんでしょうね。kdmsnrさんを悩ませてる「日本企業の病弊」というのを感じました。

「英語で読むITトレンド」へのアクセスが予想よりかなり少ないことにあきれ、ちょっと絶望的になってる当時の私に「では、どれくらいのアクセスがあったら適正だと思うか?」と聞いたら、「まあ、新書10万部くらいかな」と答えたでしょう。ご存知のとおり「WEB進化論」の大ヒットでその数字は実現されました。つまり、私の目から見て、この言葉が伝わるべき所に伝わるまで約3年かかってるということ、逆に言えば、「あわてるな、3年待て」と当時の自分に言ってやりたい。

ネットやシリコンバレーやIT産業という最もホットなテーマを扱っていて、発信する方も受信する方も最先端のツールを使いこなす達人揃いでもこれだけ時間がかかるのですから、普通のものごとにはもっと時間がかかるのは当然ですね。

また、kanoseさんの記事で取りあげられている、銀河通信の話を、私もちょうどこの頃、取りあげていました。

耳を澄まさないと聞き取れないような小さな声で語られる言葉。私にとってウェブとはまずそういう言葉が語られる場所であり、またそうした言葉をこそいとおしいと、私は感じるのですね。そして、そんな小さな囁きにも耳を傾ける人がどこかにいるということ、それこそがウェブの大きな可能性のひとつだったんじゃないか。

この感覚には大賛成・・・いや小さな声でつぶやくように賛成します。

しかし、ネットという空間は暗闇と太陽を同時に収容できないほど狭いものだろうかという疑問もある。現実問題として、目立つ所にURLを晒される危険性無しに、ひっそりと何かを囁きたい人のニーズは満たされなくなりつつあるんだろうけど。

ネットにふさわしいかどうかは別として、「暗闇、孤独、沈黙の中でないと届かない声」というものが存在することは忘れてはいかんと思う。

この頃から、「ネットという空間は暗闇と太陽を同時に収容できないほど狭いものだろうか」という「アーキテクチャの問題」をずっと考えていて、銀座のどまん中でなければ無人島に一人でやや悲観的な結論に至ったということですね。

ネットは空間を超えることを可能にして、隣の机に座っている人よりシリコンバレーにいる人を身近に感じられるようになったりしますが、時間に関してできることは少ない。明日は、10年前の明日と同じようにわからないし、3年後の自分は、3年前の自分から見た今の自分と同じように未知のままです。空間に対してどんどんユビキタスになるのに、時間に対して見渡せる範囲は同じ。言葉の通じない人には空間を超えていくらでも出会えるのに、それが通じる為に必要なだけの時間をワープして、対話の最終的な帰着点を「今ここ」にもってくることはできません。このギャップが感覚を狂わせるのではないでしょうか。

しかし、こうして3年前に自分が書いたエントリーを引用しながら新しいエントリーを書く時に感じる時間の感覚、これはちょっと新しいかも。

「あわてるな、3年待て」と3年前の自分にトラックバックを飛ばすことはできませんが、3年後の自分から今の自分に仮想のトラックバックを飛ばすことはできるような気がする。今自分が書いている誰にも通じない言葉に対して「あわてるな、3年待て」トラックバックが飛んで来ていることを想像すること。それをブログというツールが可能にしてくれるのかもしれません。

私がブログによって獲得した時間方向のユビキタス性はかなり限定されているものですが、このリーチを伸ばしていけば、「暗闇、孤独、沈黙の中でないと届かない声」にも手が届くような気がします。

(おまけ)

引用した私のエントリーからのリンクが一部切れていたので、関連リンクをまとめておきます。

詳しくは言いませんが、いろいろと不思議な因縁がよじれてる感じ。