カエサルの情報公開

ローマの共和制という政治システムはすごくよくできていて、これのおかげでローマは建国以来500年間、着実に発展して、地中海全体を支配する大国となった。しかし、よくできた分だけ変革が遅れる。ユリウス・カエサルはその時代に現れ、重要な変革を成し遂げた。

このカエサルの改革にとって、「*元老院*」という旧指導者層のしがらみをどううちくだくか、というのが一番のテーマだったのだが、その最初の一歩は、元老院の議事録を翌日に壁新聞に張り出すことと、元老院階級が管理していた納税者名簿を公開のものにすることだったそうだ。要するに情報公開である。塩野七生は「CNNテレビが元老院会議場に持ち込まれた」と表現している。

いつの時代にも、既得権を持ち変革に反対する者に一番きく薬は、情報公開であるようだ。

ローマ人の物語」はますます面白くいよいよカエサル編に突入。基本的には年代順に淡々と事実を語るというスタイルなのだが、ごく稀に上のような現代人向けの解説があったり、女性らしく「なぜカエサルはたくさんの女にモテたのに、誰からもうらみをかわなかったのか」という考察があったりする。こういうアクセントがきいていて、逆に大半を占める抑制の効いた文体が引き立っている。とにかく飽きさせない小説です。