Google OS が画期的なOSにならない7つの理由

Google OS は「画期的に速いOS」にはなるかもしれないが「画期的なOS」にはならない。つまり、ユーザから見えるOSの姿に、画期的な新機軸が入ることは無いだろう。

そう思う理由は以下の通り。

1 GoogleAppleではない

UIの革新はトップダウンでなければできない。ジョブズとか宮本茂さんのような人がいる会社じゃないと、UIの革新、ユーザ体験を一から創造し直すことはできない。

2 20%プロジェクトの匂いがしない

Googleが革新的なことをやれるルートは、「20%プロジェクト」として少人数で密かに進めていたものが、社内で非常に評価されて、80%プロジェクトに格上げになるというルートだ。

そういう場合だと、発表された時点で、その革新に実体がある。Google Wave が典型だけと思うけど、動くデモがバシバシ出るし、プロトコルのような技術資料も翌日から配信される。

今回のリリースには、そういうものが全然無い。これは最初から80%プロジェクトとしてスタートしたものだろう。

3 今のLinuxは既に充分軽くて充分良い

これは異論があるかもしれないが、今のLinuxは、ネットブック用OSとして充分良いと私は思う。

もう少し軽く速くなれば充分で、Googleの技術力があれば、再構築というレベルではなく普通に最適化すれば充分だ。

4 native clientに関する言及が無い

Googleには、native client という野心的なプロジェクトがある。本当に画期的な Web OS を作ろうとするなら、何らかの形でこれがからんで来るだろう。

5 Googleがここで画期的なOSを出したらHTML5陣営が割れてしまう

今、Googleにとって重要なことは、HTML5を実質的に身のある標準として確立することだ。

今の所、Appleと主な携帯電話ベンダーがこれに賛同しているが、Googleが画期的なクライアント用OSを出したら、陣営が割れてしまう。

Google OSがHTML5以上のものになってはいけないと思う。

6 革新的なOSでは、ドライバが提供されない

ファイルにしろUIにしろ、従来の概念をくつがえすようなOSを出したら、ドライバのあり方も変わるだろう。そうなっては、ドライバを出せるベンダーが限られて、使えるハードが限定されてしまう。

7 マイクロソフトが追いつけない「画期的なOS」はGoogleにとってマイナスになる

Googleにとって一番いいストーリーは、マイクロソフトが本気になってHTML5の標準に準拠したブラウザを出すことだ。

もし、Google OSが独自機能満載で、マイクロソフトに追いつけないようなものだったら、マイクロソフトは違う土俵で競争するしかなくなって、さらに独自路線を歩むだろう。

Google OSの最も重要な役目は、数年でマイクロソフトに追いつかれることだ。追いつかれるということは、IEHTML5に準拠していてそこそこ軽いブラウザになることで、世界中のWeb開発者の作業量が半分になるということだ。

そして、IEの為の無駄な作業が不要になった分だけWebがもっともっと充実するわけで、それがGoogleにとって一番望ましい世界のあり方である。