TBS「朝ズバ」捏造は「あるある」よりはるかに悪質!

不二家の信頼回復対策会議(議長・郷原信郎桐蔭横浜大学法科大学院教授)は30日、TBSが情報番組で放送した内容について「全く事実無根でねつ造の疑いすらある」とする調査結果をまとめ、TBSの対応次第では「損害賠償請求などの法的措置を検討すべきだ」と不二家に提言した。

 TBSは1月22日放送の情報番組「みのもんたの朝ズバッ!」で、不二家平塚工場(神奈川県平塚市)の元女性従業員の証言として、小売店から回収した賞味期限切れのチョコレートを溶かして、牛乳を加えて製造し直し再出荷していたと放送した。その際に、不二家のコメントとして「確認が取れていない」と放送した。

 これに対し、同会議はチョコレートの回収はコストに見合わず事実無根だと強調。さらに「確認がとれていない」とコメントしたとされる社員は不二家の中に見つからず、「やり取りが本当にあったとは認めがたい」としている。郷原議長は同日の会見で「訂正放送とみのもんた氏自身の番組内での謝罪がなければ名誉回復はできない」と述べた。

 一方、TBSは「ねつ造はなく、対策会議の主張は容認できない」とのコメントを発表した。

情報番組「みのもんたの朝ズバッ!」の不二家報道をめぐり、不二家側がTBSとの話し合いの録音などを公開したことについて同社が批判したのは容認できないと、不二家の信頼回復対策会議の郷原信郎議長が2日、井上弘TBS社長に公開質問状を提出した。

 TBSは3月28日、同番組が放送した不二家の不祥事に関する内容が「正確性を欠いた」と釈明。質問状では、釈明内容と不二家が事前にTBSに確認した内容に違いがあり、不二家側は合意の上録音した議論内容などを同30日の会見で公開。TBSは同日「無断公表は道義にもとる」とのコメントを出した。

 郷原氏は「報道という公益性の高い問題でTBSに不誠実な対応があり公開した。道義にもとるとした理由を明らかにしてほしい」としている。

この問題のポイント

  1. 告発者は元検察官で企業コンプライアンスの専門家
  2. 「賞味期限切れチョコ再利用」という報道内容は噴飯もののデタラメ
  3. 取材不足、知識不足によるミスではなく、ウソとわかっていて故意に捏造した
  4. 単なる現場の暴走でなく、会社として捏造を隠蔽、正当化しようとしている
  5. 他局の不可解な沈黙(テレ東以外)

告発者は元検察官で企業コンプライアンスの専門家

この一連の問題提起の主役は、「信頼回復対策会議」議長の郷原信郎氏である。

元検事であり、コンプライアンスの研究者、専門家として、不二家の「信頼回復対策会議」の議長を引き受けた方である。一方の当事者ではあるが、不二家の利害のみを代弁する立場の方ではなく、元法曹関係者であり限りなく公平な第三者に近い。

また、詳しく経緯を確認するとわかるが、単に「間違った報道があったから問答無用でいきなり告発した」という話ではない。きちんと関係者の言い分を検証し、TBSに対しても当初は訂正でなく調査を求める等のステップを踏んで、TBSが全く誠意ある回答をしない為、このような告発に至っている。

さらに郷原氏は、「信頼回復対策会議」議長の肩書でなく、「桐蔭横浜大学コンプライアンス研究センター長」の肩書でTBS宛て公開質問状(PDF)を出している。

単なる特定企業の利害の問題でなく、重大な社会問題として、ある意味、ご自分の社会的な立場をかけて告発されていることに注目すべきであると思う。

「賞味期限切れチョコ再利用」という報道内容は噴飯もののデタラメ

TBSの報道内容は、「賞味期限切れのチョコを回収し、溶かして再利用した」というものであるが、これがちょっとでも菓子製造や流通に関わった人から見ると、話にならないデタラメであることがすぐわかるらしい。

仮に不二家が衛生観念とモラルに欠けたどうしようもない企業であったとしても、この行為はコスト的に成立しない。

  1. すでに出荷し売上も立っている製品の売れ残りは、小売店の損失であり、製造元が負担する必要はない
  2. 回収のコスト、輸送のコスト、包装を破り製品を取り出す手間は、非常に大きい
  3. チョコ以外の不純物(チョコの中のジャム等)は溶かした後にどうするのか(不二家の製品に純粋な板チョコはない)
  4. 牛乳はチョコ製造で使うことはない

要するに、回収して溶かしてチョコを作ったら、味や品質もごまかせないほどひどいことになるが、何より普通に作るよりずっと高いチョコになってしまうのだ。

企業が、そんな見合わないことをするわけはないし、元従業員がそんなミエミエな嘘をつくものか非常に疑問がある。

取材不足、知識不足によるミスではなく、ウソとわかっていて故意に捏造した

この放送の前に、TBSは不二家に電話取材しているが、その取材時の説明と放送内容に不一致がある。

取材時の説明は、「平塚工場の元従業員が賞味期限切れのカントリーマアムを再利用するよう指示されたという証言がある」というものであった。しかし、何と平塚工場ではこの「カンタリーマアム」という製品の製造は行なってないそうで、その回答を受けて、放送内容がチョコの再利用になってしまったのである。

つまり、元の従業員の証言はカントリーマアムの再使用を告発するものだったのだが、それが成立しないため急遽チョコに差し替えられたわけである。

そして、取材の時の質問が「カントリーマアム」に関することであるのは、TBS側の文書にも明記してあって、両者の間で認識が一致している。

この「カントリーマアム」が「チョコ」に変わってしまった経緯が、非常に怪しい。まるで「賞味期限切れ再利用」という報道内容だけが最初から決まっていて、取材によって、そのディテールを肉付けしていったような印象である。結論が最初にあって、証言を調整しながら構成していったような経緯が見てとれる。

もし、最初に証言があったとして、それが「カントリーマアム」であったのなら、製造してない商品に関する証言であるので、この証言の信憑性が疑われる。これを放送で使うべきではないだろう。

もし、最初に証言があったとして、それが「チョコ」であったのなら、TBSは不二家に対して嘘をついて取材したことになる。そこで取材相手に嘘をつく合理的な理由がない。

これらの経緯を総合すると、TBSは取材中に嘘と判明した証言を元に事件を構成し、そのまま証言も含めて放送した疑いが強い。また、元従業員の証言そのものが意図的な捏造である疑いもかなり高い。

単なる現場の暴走でなく、会社として捏造を隠蔽、正当化しようとしている

この問題について、何度か不二家とTBSの間で話合いが行なわれているが、その中では現場の人間だけでなく、番組プロデューサーやTBSコンプライアンス室長が対応している。

そして、上記のような疑問点をぶつけられても、TBS側は、何ら具体的な根拠をともなう説明をしてない。単に、「我々の報道姿勢には問題ない」という自らの信念を繰り返しているだけである。

一方、郷原氏は、公開質問状の中で「この問題についての議論は、すべて公開の場で行い、他のメディアや社会の批判に委ねたい」とおっしゃっており、当時のメモ等を添付した上で詳しい事実関係を公開している。

この議論がすれ違うのは、不二家側は必ず事実関係を提示してそれを根拠に主張しているのに対して、TBS側がいつ誰が何をしたかを一切明かにしてないからである。また、社内で何らかの形で問題点を検証していこうという姿勢を全く見せていない。

もしTBSが、社内でコンプライアンスや報道までのプロセスを検証していく姿勢を見せていれば、郷原氏も報道の自主性を尊重し、そのプロセスにまかせるつもりだったと思う。

しかし現実は、全く逆である。現場のみならず、責任者や局全体を代表する立場の人間も一緒になって、明かな捏造を強弁し正当化することのみに終始しているので、このような強い口調の告発が行なわれているのである。

他局の不可解な沈黙(テレ東以外)

このように、この捏造は、「あるある」の捏造よりはるかに悪質なものである。

  1. 「あるある」では捏造により直接的に大きな不利益を受けた被害者はいないが、「朝ズバ」は不二家という企業に回復不能に近いダメージを与えた
  2. 「あるある」では局の責任は監督不行届きであるが、「朝ズバ」は積極的に捏造の隠蔽に関与している
  3. 「あるある」は「朝ズバ」と比較するとずっと早く記者会見し、局の責任を一部だけにしても認めている
  4. 地方局とキー局では影響力が全然違い、それに応じて責任も重い

それにも関わらず、この問題についてテレビ局はほとんどニュースやワイドショーで放送していない。特に、非常に重要な、郷原氏からTBSへの公開質問状については全くニュースになっていない。

非常に不可解である。

論理的に説明しようがないので、推測するしかない。推測するとしたら、非常に陰謀論的な説明しか思いつかないのだが、私としては、次の二つの可能性を考えてしまう。

  1. 匿名の証言の捏造等、他局も同様に日常的に似たことをやっているので、うかつに問題にしたくない
  2. この陰謀には何らかの背後関係があって、その関係でうかつに放送できない

もちろん、これは何の根拠もない推測であるが、この社会的に非常に重要な事件について、他局が不可解な沈黙を続けていることは事実である。

関連リンク

不二家側の発表資料

事件の概略

TBSのこれまでの問題について

インサイダー取引疑惑など背後関係を推測しているブログ記事(内容についは未検証、というか私には判断できません)

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