絶対ありません

  • 「違反キップを切ったけど罰金払わないでそれが消えることありますか?」
  • 絶対ありません

そう言われて、違反キップのデータを削除できないようにシステムを作ると、エライ人の駐車違反のモミ消しができなくて実運用で破綻する。

官庁の仕事はあまりしてないけど、普通の会社では「絶対ありえない」伝票って実際にはかなりある。別に違法行為というわけじゃなくて、理屈から言ったらありえないけど、まれにおかしなデータがあったり順番が逆になるデータがあったりする。

SEの仕事はユーザが言う「絶対」が絶対ではないことを見抜くことだ。人間に「絶対こういうことをするな」と言っていても、なんだかんだで「こういうこと」をしてしまう。人間が処理しているうちは、「絶対」が絶対じゃないのでうまくいく。同じことをコンピュータに言うと、本当に100%そういうデータが通らなくなって問題が起こる。

別に、ユーザが馬鹿だったり嘘ついたりごまかしたりするわけじゃない。誠心誠意「絶対」と言っても、それがコンピュータの言う絶対ではないというだけのことだ。

  • 「万が一の不正のためにここだけは二重にチェックすべきだと思いますが」
  • 「うちでは不正は絶対ありません

自分の言う「絶対」がコンピュータに通じない、ということを理解しない馬鹿もたまにはいる。客が馬鹿でそうシステムを作ると言って聞かなかったら、自分とこの課長あたりに泣きついて説得してもらったりする。トラブって尻ぬぐいをするのは、結局SEだから。

ごくごく稀に客の課長クラスまで馬鹿でうちの課長でも手におえないこともあるが、そういう時はこっちの部長を出す。俺には経験がないが客の部長が馬鹿なら事業部長か役員を出すしかないだろう。

  • 住基ネットにクラッカーが侵入することありますか?」
  • 絶対ありません

しかし大臣が馬鹿だったら、いったい誰を出せばいいのだ?

システムには、必ずこういう問題がつきまとう。ローカルなシステムではそれは技術的な問題(で失敗してもサラリーマン喜劇ですむの)だが、グローバルなシステムでは、それは政治的、思想的な問題なのだ。

「絶対」と絶対の違いがわかる奴はそれがローカルな問題だと思っている。そして同型のグローバルな問題があると、習慣的に違いがわからない奴にまかせてしまう。

たくさんの人の生死にかかわるような問題がたくさんあるのだけど、それを論議するための言葉もなければ、審議し決定するための手続きも確立されてない。これは絶対にに放置できない問題だと思う。