「プリウス」のソースコードを公開せよ!

私は、*オープンソース*とは単なるソフトウエアの開発手法でなく、もっと普遍的な革新だと思っている。音楽や小説などの芸術的表現や自動車などの工業製品も同じしくみで作れるはずだ、と考えている。同じようなことを考えている人もいるようで、「プリウス」のソースコードを公開せよ!という記事があった。

我が意を得たりという感じだが、ひとつだけ補足したい。もし、この人の言うようにハンドルやアクセルを制御するパラメータ、あるいは制御ソフトが公開されて、取り替え可能になっていても、それを自分の望むように変更できるユーザは限られているだろう。だから、非現実的な主張と思う人のほうが多いかもしれない。

しかし、自分でパラメータを設定しなくても、他人の作ったパラメータをもらうことができれば、話は違ってくる。誰か自動車にめちゃくちゃ詳しい人の作ったパラメータをもらって、ちょっと直せばいい。または、直してもらうように作者に依頼すればいいのだ。フリーソフトの経験で考えれば、こういうパラメータを作って公開する人も、そういうユーザからの反応や提案を楽しむし、自分の成果物の向上に役立てる可能性は高い。ソフトと同じように、人気のあるパラメータがいくつもうまれ、それを囲むコミュニティがそれを育てるような状況が実現する可能性は高い。

問題は自動車メーカーのほうがそれに気がつくかどうかだが、おそらくこれは市場原理で解決がつく。こういう調整(パラメータの入れ替え)ができる車とできない車が競争したら、前者が勝つに決まっていて、それでどのメーカーもやることになるだろう。カスタマイズと安全性の両立という問題も同じことだ。調整を許しながら、いざという場面では絶対安全な動作をする仕組みは技術的には難しいかもしれない。例えば、ブレーキを一定以上踏み込んだらユーザのパラメータと関係なしに、無条件でメーカーの設定した動作をするとか。しかし、いくら難しくても不可能でないならば、市場原理に押されて、やりとげるメーカーが出てくるはずである。