洗脳ノウハウのオープンソース化

このエントリの特に後半には、すごく重要なことが書いてあると思う。

まず、アル・ゴアの近著から次のエピソードが紹介されている。

かれが昔はじめて大きな選挙に立候補したとき、最初はリードしていたのだけれど対立候補に追い上げられてピンチに陥った。その時コンサルタントはかれにこう進言した。「こういう内容で対立候補を批判する広告を打ちましょう。そしたら相手はこう反論するはずなので、こう再反論します。そうすれば最終的に7ポイント差で勝利できます。」 かれがそれを了承したところ、実際にコンサルタントが言った通りに事態は進行し、結局ゴアは7ポイント差で当選した。

ここで、「スゲー、こいつの言う通りにしてれば、俺、大統領になれるじゃん」と思わなかった所がこの人らしい。

かれはコンサルタントの予測の正確さと、それが民主主義にとって何を意味するかに驚愕した。そして、いまの政治において理性と論理が通用しなくなってしまったことは、単にブッシュや共和党だけが悪いのではなく、自分を含めた全ての人に責任があると論じる。

こういう大衆を操作するノウハウができていて活用されているというのが、やるせない現実ということになるのだろうが、これを受けて、macskaさんは次のように言っている。

事実よりイメージを優先するような、人を説得するのではなく欲望や恐怖心を煽るような手法を運動に導入するのではなく、しかし他者の視線を意識した、戦略的な「勝てる」運動をするには、どうすればいいのか。わたしは、マニュアル化とは別の意味で運動におけるさまざまなテクニックを分析しそのやり方をどこかに蓄積しておくのが良いと思う。コンサルタントが一番の売り物にしているのは多数の事例を元にした豊富な技術的知識だとすると、これはコンサルタントの知識をオープンソース化することになる。それによって運動をうまく運営できるだけでなく、情報の受け手や運動の支持者たちも運動体を監視することができるというわけ。

私も同感である。

同じノウハウを駆使して洗脳軍拡競争をやったら、「政治」という場そのものが荒廃してしまうと思う。

そうではなくて、そのノウハウをオープンにしてしまえばいい。誰もがそのデータベースにアクセスできるようになれば、ある部分ではそれが無効化されるし、ある部分では、全ての陣営によって同じそのノウハウが使われ、洗脳力としては対等の戦いになる。

同じ洗脳力で勝負して、動員に差がついたら、その結果に民意は反映されていると見てもいいんじゃないだろうか。

というか、共有されている洗脳ノウハウのどれを使いどれを使わないかということに、何かを主張する人たちの「良心」が見えてくると言った方がいいかもしれない。

そして、データベースという言葉を使ったけど、これは一箇所に特定のフォーマットで静的にまとめられるものではなくて、たくさんのブログの連携がそのような機能を果たすようなことを、私はイメージしている。

そういう形で洗脳ノウハウはオープンソース化すべきだし、いずれそうなるなるだろう。

ちょっと関連する話題として

専門家のブログが・・・と言う話題はでてるけど、実際は、少ないとは思わないですね。目立たないだけです。目立ってるのはニセ科学への切り口で有名な菊池さんとか限られているけど、高校生への生物進化に関する質問をコメント欄で答えていた植物・保全生態学で有名な矢原さんとか、生命科学で有名な柳田さん、リスク学で有名で専門的な事も丁寧に書いている中西さんなどもいます。多くは無いかもしれないけど確実にブログや日記を書いていますよ。だから、いないと思わせる印象操作にのせられてるような狭い世界をみちゃいけないんだと多くの方に忠告しておきたい。いい加減な自説にブックマークなどで突っ込みを入れられて怒りまくってる様な学者ブロガーが確かに目立ってるけど、そんな人を見てあれが学者だと思ったりそれが普通だと思うより、上記にあげた様な人たちを少しは見てほしいと思う。

また、専門家のブログに限らず、現場の方達のブログもある事を意識したいですね。有名な専門家のブログでも目立たないものが多いのに現場の方達のブログを探すのは確かに大変です。そんなちょっとした良いものを拾ってくれる情報源としてブックマークが使われだしたらはてなにとっても良い財産になると思うよ。専門家といえども現場の感覚を無視したときは本質とは離れたところを見る事も少なく無いですよ。だからこそ、現場感覚の言葉が見える場というのは専門家が正しいことを言ってるかどうかを理解する上でも大切です。ちょっとかいたけど、挑発ばかりしている様な人に注目するより、本当に良いものを発掘しようと意識してくれたら幸いです。

ここで言う「専門家」や「現場の方達」のブログも確実に増えている。そういう本当に良い情報は、埋もれているように見えても、何らかの形で拾われるし、拾われてすぐ忘れられるように見えても、要所要所でまた再び上がってくる。

今は、それを細々とわずかな人が人力でやっているけど、やがてシステムがそれをサポートするようになるだろう。

私は、そういうことに楽観的なのだけど、「洗脳ノウハウデータベース」にしろ「きちんとした専門知識の裏付けのある地道なブログへの案内情報」にしろ、「やれば儲かるものだからきっと誰かがやる」と考えるのが基本的に正しいと思っている。

情報が稀少性によって価値づけられ流通するのであれば、そうなるしかないわけで、だからこそ、そっちに向けて時代を後押しする気でいればいいと思うんだ。