旧保守は町内会の拡大バージョン

Moleskin Diary - かなり気まずい瞬間


このおっさん。僕が住んでいる地区の自治会長なのである。この手の会長職を引き受ける人はみなそうだが、彼もある種のプチ権力者でしかも日の丸・君が代大好きな人間なのだ

本論とは関係ない所に突っ込んで申し訳ないけど、私は、自治会長経験者と地方議員経験者を個人的に7人知っているが、「プチ権力者」というタイプはいない。むしろ、回りにいるそういうタイプの人たちから、押し出されるように就任した感じ。

調整能力と事務能力にそこそこ長けていて押し出しが強くない人が、地域への奉仕という義務として引き受けているケースがほとんどだ。

そして私は、将来自治会長にさせられそうな同世代の人を2人知っているが、2人とも初見の印象よりいろいろモノを考えている人だった。地域のあり方、コミュニティのあり方について、「このまま行くはずがない」と懸念している。いろいろ話してみると、具体的なプランまで出て来ることもある。

しかし、彼らが一番困難を感じているのが、OBの対応である。組織の役員OBの目を彼らは気にしていて、彼ら自身の観点とOBの観点の間で揺れ動いている。OBが関係してこない問題だとリーダーシップを発揮する人たちなのだが、OBにひとこと断らないといけない問題が出てくると、ひとこと断るだけでいいだけの話であっても、とたんにシュンとして意気消沈してしまう。

こういう人たちは、「何もしない」ように組織をリードすることがうまい。おまけに、OBの圧力はもともとの資質以上にそういう方向に作用する。自治会が何もしなければ、だいたい地域は円満におさまる。だから、7人ともよい自治会長、地方議員だったと思うし、2人はよい自治会長になると思う。

オウム信者が地域に引っこしてきたりしなければ、自治会なんて「何もしない」ことを一生懸命やっていればすむのだ。そして、「何もしない」ことに汗をかく人間を育て、「何もしない」ためのノウハウを教育し、さらに安全弁として条件反射的に年長者の意見を無条件に重んずるようにしつけ、その中から一番「何もしない」人を円満に会長に選び出す仕組みを自治会は持っている。

特定郵便局長に知り合いはいないが、おそらく似たようなものだと思う。単なる世襲ではなくて、かなり厳しい「何もしない帝王学」を習得しなければ、その地位を継承できないものなのだろう。

日本の組織というのは、基盤としてこういう力学で運営されていて、そこに「プチ権力者」が巣喰うようになっている。「プチ権力者」タイプの自治会長もいるだろうし(私も噂は聞いたことがある)、外から見るとそれが目立つのだが、中から見ると「いい人」の集合体である。

旧保守とは町内会の拡大バージョンだろう。旧保守が「何もしなかった」ことの責任を取らされる形で被害を受けるのは、「いい人」が多いと思う。それは公正なことではないかもしれないが、今の状況で「何もしない」という選択肢は不公正より大きな悪である。それと、「プチ権力者」というmoleskinさんの表現も一面ではあたっていると思うが、「プチ権力者」は本物の権力者よりタチが悪い。