イキルナヤムシヌ

悩みをきっちり悩みきるのはとても時間がかかる。時にはひとつの悩みを何年も悩んでしまう。それなのに毎日のように新着の悩みがやってくる。だから、僕はたくさんの悩みをゴミ箱にほうりこむ。

しかし、ゴミ箱に入れたものは消えてしまうわけではない。いずれ「ゴミ箱を空にする」という操作が必要になる。ゴミ箱に入れた悩みを消すためには、その悩みを悩みきることは必要ないだろうか?

僕の中には、ゴミ箱に入れた悩みをゴミ箱の中に隔離する力がある。それは一定のエネルギーを消費して日夜活動し続けている。そのエネルギーの供給がとだえたことはこれまでないのだけど、僕が死ぬ時にも、そのエネルギーが供給され続ける保証はない。僕が死ぬ時には、隔離してあったはずのたくさんの悩みが、一度に襲いかかってくるのではないだろうか?

僕は、死ぬということをそのように自分がほどけていく体験ではないかと想像していて、だから、悩みというのは、死という体験に対するチュートリアルのようなものではないかと考えている。