オープンソース政党

それで、この百家争鳴状態を政治的な権力に変えるためには、まず、政策や代表者個人にコミットすることをやめるべきだと思う。その代わりに、ある程度機械的な意思決定システムにコミットして、それに基づいた共同戦線を考えるべきではないだろうか。

例えば、はてなポイント(のようなもの)による投票によって、人事や政策課題の優先順序を決める。議員や政党の役職につく人には、多くのポイントや議題の提案権とか予算の執行権のような特別な権限を与えるが、その権限の内容は全部クリアにする。そして、そのような特別な権限を行使する人には、より多くの情報発信が求められる。モブログによって、いつどこで何をしたかを毎日開示するくらいの義務があってもいい。それによって、一般の党員の評価を受け、それがポイントに反映される。

議員になったら、金の出し入れは全てシステムに記録され、そこから自動的に政治資金報告書が出てくるし、政治資金報告書に載らない事項も全て、即日オープンにされる。機密事項も必要かもしれないが、機密にする行動や金の出し入れも、別の役員が監査して、その監査記録が残り、一定時間の後に、システムによって自動的に開示される。

このような政党のシステム全体をオープンソースの業務システムとして開発し、党員も役員も議員も、それにコミットするのだ。基本的に、この業務システムの仕様には関係者全員が同意するが、それ以外のいかなる政治的な事項も、全員が同意することはない。個別の政治的な意見や行動は、議論と相互評価のネタになるだけで、それらは全て「ポイント」に還元される。

アマゾンという会社は、ほとんど業務を運営するコンピュータシステムが会社の実体だ。それと同様に、この政党の実体は、意思決定システムである。

役員専用会議室や議員専用メーリングリスト等はあるが、それがどのように制限されどのように記録されどのようにチェックを受けているかは、システムの仕様を見ればわかる。疑い深い人はソースを見れば検証できる。政党としての活動全体をオープンにするわけではない。外部閲覧不可のデータベースをいくつも持っている。しかし、そのシステムはオープンソースとして外部に開示されている。何がどう隠されていて、どう検証され得るかは、業務システムのソースというかたちで100%開示されているのだ。

そもそも、自民党の実体は、政策でなく人でなく意思決定システムである。森総理を決めた密室談合だって、あの5人は、それぞれが複数の政治勢力の代理として権力を持っているわけで、その実体は意思決定システムである。5人は、恣意的に自分の思うように何かを決断できるわけでなくて、背後にあるいろいろな組織の意向を調整する機能を果たしているだけある。その調整の最後のフェーズとして「密室」というシステムがあって、それによって総理が決まると、全員が基本的にその指示で一丸となって動く。自民党を支持する人は複雑怪奇なその意思決定システムにコミットしているわけで、人間が運用するそのシステムをコンピュータシステムに置き替えるというのは、それほど突飛な発想ではないと思う。

また、議員の側からこのシステム(=政党)を見ると、「政治資金のクリアな運用を保証する」「政策立案」「世論集約」という業務のアウトソーサーであるとも言える。特に、後者の二点については、ブログというシステムは非常に有用であることがほぼ立証されていると思う。よって、議員には大きなメリットがあるので、それと引きかえの情報開示、情報発信という負担は、お互いにメリットのある取引となる。

それで何より、上の記事に書いた必然的な百家争鳴状態ということを考えると、政策や政治的信条を含まない、純粋に意思決定システムだけの政党というのが、どうしても必要なように思われる。