対称性人類学 カイエ・ソバージュ

勘違いしがちだが、チョー昔の人は、決して「ウホウホ」言ってるだけの猿人ではない。生物学的な意味では、彼らの脳は我々と同じように発達していて、外見も機能も我々の脳と区別できない。五万年前からタイムマシンで新生児をたくさんさらってきて、現代の環境で育てれば、そのうち何人かは量子力学を理解するし、何人かはLinuxカーネルハッカーになるだろう。

チョー昔の人も大半は我々と同じくらい頭がいいし、何人かは我々よりずっと頭がいい。だから、昔の人が馬鹿なことしか言ってないと思うのは、傲慢で無知なことだ。

問題は、昔の人が頭の良さをどのように使っていたかということで、当然、今の人のようにチャットをしたりブログを書いたりはしない。そのような環境の差を克服する努力は、昔の人の頭の良さを知るためには必要である。

この本は、敬意を持って学ぶべき対象としての「神話」を扱っている。中沢氏によると、「神話」の中には驚くべき複雑な形式的思考が含まれているそうだ。

例えば、二次連立方程式の解法について説明した教科書が、長年口伝えで伝搬したとする。そうすると、直感的な説明や例題は伝えられた先の文化によって変化していくだろう。xやyという文字もどんどん移り変わっていく。しかし、解を表わす公式に含まれる形式的な思考は失われず、その本質を取り出すことは常に可能である。

そのような経年劣化に対する耐性は、数学や論理学だけが持つものではなくて、純粋で高度な思考が持つものである。数学や論理学の一部は純粋で高度な思考であるので、正しく理解され伝えられる場合に中核が変形しないことを期待できるが、数学的表現以外がそのような属性を持てないと考えるのは、現代人の偏見である。

ということが、実例によって理解できました。シリーズの二冊目を読んでますが、すごくエキサイティングです。