Jobsと金子さんの見せてくれた夢
上記の記事は、Days of SpeakEasy: Jobsのやったことに触発されて書いたものですが、書きながら、記事に引用するためにJobsの挑発的な発言を探したのですが、そういう発言はなかなか見つかりませんでした。確かに、Jobsは「コンテンツで儲けたいというコンテンツホルダーの要求」に配慮し、かなり言葉を選んで発言しているみたいです。Vins-Tさんの指摘する「相反する要求を共通の地平で止揚」ということを実感しました。それは、確かに重要な指摘だと思います。
ただ、Jobsは最初からこうだったわけではなくて、不死鳥 スティーブ・ジョブズという記事にあるように、Lisa,NeXTという技術的には非常に優れてはいる大失敗を二つも経験しています。また、経営者失格とされて自分が創業したアップルを追われるという苦い経験もしています。
「相反する要求を共通の地平で止揚」は、そういう大失敗を乗り越えそれを糧として到達したものです。金子さんにも、ぜひ今回のことを糧として、ぜひ次のチャレンジに生かしてほしいと思います。
それと、Jobsにそれが可能だったのは、彼のカリスマ性や戦略もありますが、一方で、ユーザがその方向に向かっていて自分らがこのままでは後がないという、旧コンテンツホルダー側の危機感があったのだと思います。その危機感の背後には、グレーゾーンをフロンティアと見なし、積極的に育てていこうという社会的な合意があると思います。
社会全体のその雰囲気がパロアルト研究所の出会いからiTunsMusicStoreまで、一貫して彼を後押ししているような気がします。
私がデジタル証券のことに繰り返し触れるのは、「これはそのまま実現可能な案だ。すぐにそのままこれをやれ」と言いたいのではなくて、Winnyとデジタル証券がどれだけたくさんの夢を私に見せてくれたのかを書いておきたかったからです。私には、金子さんの夢を見せる力はJobsに匹敵するように思えます。
(追記)at most countable: それがぼくには楽しかったから
楽しさに共感しつつも、「いいことばっかりじゃ、ない。/それに対して、社会はどのように対応していくべきなのか、冷静に考えていく必要がある」っていうことに同感します。私よりこの人やVins-Tさんの方がずっと冷静だと思います。
ついでに、ちょっと前にいただいたコメントですが、「技術屋とか科学屋なんてものは世界を危険にさらしてナンボだと」この言い方が面白かった。