汚染水流出の影で深刻化する地盤の危機
これに至る経緯については、次の二つのまとめ記事が参考になると思います。
着眼点は違いますが、お二人に共通しているのは、「東電は汚染水処理について全くの無策だったわけではなくそれなりのシナリオを持っていたが、何らかの見込み違いがあって、途中でそのシナリオが崩壊して混乱しているのではないか?」という推測です。
ハッピーさんは多核種除去装置(アルプス)の稼動遅れ、木野さんはサブドレインの工事中断(原因未公開)から、混乱が生じたとおっしゃっています。
特に、サブドレインの工事中断というのは、重要なポイントではないかと思います。大規模な土木工事で地下水対策というのは非常に重要で基本的なことのようです。その失敗例としては、1991年の新小平駅の水没事故があります。
9月半ばにはホーム北の壁面から地下水が噴出し始め、10月11日朝から接近した台風21号による大雨により23時45分頃ホーム北側と線路を含むU字形構造全体が120mにわたって最大1.3m隆起し、擁壁継目には最大70cmの開口部が生じ、土砂混じりの地下水が大量(復旧時の計測で8t/分)に流入、駅全体が冠水しただけでなく周辺で陥没が発生し、近隣住民が避難するに至った。
武蔵野礫層には西から東へ伏流水が流れていて、その地下水位は降水の影響で大きく上下する事が判っている。事故当日の地下水位は地表下3m以上まで上昇し、これは75年程度の再現確率と見られている。 この南北方向の路線がダムのように作用して伏流水を堰き止め、上昇した地下水位の浮力によって土被りが無く浮き上がりに最も弱かった駅北側が大音響とともに一瞬で破壊に至った。
時により、地下水の力はすさまじいものになるようです。このような事態がもし福島第一で起きた場合には、3.11以上の被害が生じる可能性があると思います。汚染水の流出防止の為には、まさに「ダムのように作用」する遮水壁を新設する必要があるわけですが、これは水の出入りをきちんと計算して慎重に行なわなければなりません。建物崩壊に至らなくても、単に汚染水が地上に流出するだけで、今後の作業に大きなインパクトがあります。
当然、東電や工事関係者はそんなことはわかりきっているはずですが、政治的要素で混乱して、対応が取れなくなっているのではないかと思われます。