ノーガードの論戦の後に内閣支持率の高い内閣ができたら一番いい

佐藤優氏が西松建設の事件について、いくつかのラジオ番組で「これは検察の正義感による暴走である。国家的に危機に対し、政治主導と民意の統制を取り戻すべき」という趣旨の発言をされています。

以下に、発言内容をメモしてみました。

アクセス特集・二木啓孝+佐藤優+麻木久仁子・3月6日(金) - アクセス

  • これは組織相手の消耗戦、小沢の負けは確実。撤退ではなく転進が必要
  • 党代表は辞任して、この戦いに専任すべし
  • 民主党は次の代表選出を疑似国政選挙にすることを提案したい
  • 私は、自民党民主党も両方応援したい
  • 政治家は国民の代表であるから、世直しは民意の信任を得たこの人たちにやってほしい
  • 検察はものすごく正義感が強いが世の中の全体的な構造が見えてない
  • 2.26の繰り返しになる(狭い世界しか知らない人の義憤からの世直し)
  • 真の対立軸は民主党自民党ではなくて国民対官僚
  • 自民も民主も民意を受け止める方法を作りフェアプレイで早く選挙をやってほしい
  • 検察官たちの純粋な思い、正義感の強さには共鳴する
  • しかし、世直しはあなたたちじゃない。ゴールキーパは持ち分の中にいなさい、変なリークなんかやめろ、と言いたい。
  • 小沢さんは負けるのは確実、でも負け方がある。民意を反映する政治を戻す為に何ができるか政治家一丸となって考えろ

佐藤優小沢民主党代表の第1公設秘書が逮捕された件』3/4

  • これは国策捜査ではない
  • 司法はゴールキーパーで政治がフォワード
  • フォワードが弱いからとゴールキーパーが前に出て手(逮捕権)を使っている
  • 今までは国全体への影響を見てたけど今回は見てない
  • 2.26事件と同じ
  • 公益を実現する為に国家がどうなるか見えてない
  • 国民が冷静に政治的な状況を判断できるかどうかに影響を与えるから選挙直前にこれを立件するのはよくない、という判断が昔の検察にはあった
  • 検察は言わば星飛雄馬=真面目で世の中のことを真剣に考えている、自分の正義感で回りにどんどん介入して、最後は自滅する
  • 政治資金規制法を厳格に適用したら、おそらく三分の二くらいの政治家はいなくなる(残りは影響力の無い人)
  • リークという武器を冷静に使えてない。感情的反発で振り回している
  • たんたんと無味乾燥に仕事をしている所に検察の本当の凄みがある
  • 「僕たちはこんなに仕事してるんだぞう」という時は官僚としてあぶない

佐藤優小沢民主党代表の第1公設秘書が逮捕された件』4/4

  • 検察官はとても忙しいので法曹界と犯罪者としかつきあってない
  • 彼らには今、国民にとって何が必要なのかはなかなか見えない。この捜査がどういう影響を与えるか心配
  • 検察が時の政権の意思で動くことは絶対ない。そうではなくて正義感の強さの為に問題が起きる
  • 小沢さんが発言すると翌日にはワっと情報が出る(目の中で炎が燃えちゃってる)
  • 今は違うけど、弁護士の方が儲かる時に検察を選ぶのは正義感の強い人なのは間違いない
  • あの仕事は正義感がないとできない、ただし、世直しの為の正義感がある人は官僚には向かない
  • バランス感覚の問題、民主主義社会においては世直しには民主的な統制(選挙で落とされる)が必要
  • この事件が日本の国家を弱体化させていることは間違いない
  • 一回選挙をやってその後は国家としてまとまるべき
  • (4年間選挙せずに3回首相が代わる等)政治が機能を果たしてないから国民のいらだちもある
  • 正義感の強い官僚たちのあせり、そこが2.26事件と同じ
  • 選挙によって統制されてない官僚が世直しをするという流れは、警戒しなくてはいけない
  • 正義感の高さゆえに恐しいことが起きている。率直に言って視野が狭い
  • 国会議員の中にも危機感を持っている人はいるが、発言が検察批判と取られると「来るぞ」と(思って口を塞いでいる)
  • 「我々が狙ったら確実に摘発することができるし有罪だ」と私を調べた検察官は言った

この中で、私が特に重要だと思うのは、次の二点です。

  • 国会議員が萎縮していること(何か発言して検察批判ととられると自分も危ない、100%安全と言いきれる議員はいない)
  • ここで飛び出した検察が元の持ち場に戻ることは無いのではないかという観察

私は、民主党外交政策と経済政策について、大きな不安を感じています。個々の議員の発言が違いすぎていて、実際、政権についた時に何をやるのかわかりません。

だから、自民党にはそこを徹底的に攻撃してほしいと思っています。民主党は実際どうするつもりなのか、それを論戦の中で明らかにしてほしい。

さまざまな考え方が同居しているという意味では与党も大して違いはないでしょう。民主党の党内不一致を指摘したら、郵政民営化の問題等でブーメランになるので、攻めたいけど攻められないという所はあると思います。

だけど、選挙が迫れば、なりふりかまっていられなくなるので、これから少しは、そういう議論が起きてくるのではないかと思っていました。お互いが防御を考えずに相手の弱点を突いてくれれば、いろいろなヒントが見えてくるのではないかと思います。

しかし、この問題で、そういうことは期待できなくなったと思います。

焦点が小沢スキャンダルになってしまって、政策論議が霞んでしまいます。

もちろん、そこから政策論争が起こり、両党の方針の違いがはっきりしてくればいいのですが、ここで問題なのがどちらも検察の目を意識しなくてはいけないこと。

佐藤氏の観察によると、検察は今回特に感情で動いている面があり、しかも政治資金規制法でグレーな人はたくさんいる。検察批判と受け止められたら自分も立件されて、その場合、100%ジ・エンド。

だから、総選挙を前にして、両党の本音を見極めなくてはいけない時期に、国会の政策論争を停滞させてしまっているのは間違いないと思います。

もちろん、そこで萎縮するような議員が悪いとも言えますが、その為には世論の支持が必要です。議員個人や党でなく、政治というプロセスそのものを支持することが必要です。

ところが、世論は、政治より行政や司法の方を信頼しているように思えます。

確かに現状は政治が機能してなくて行政で何とか国が回っているという状況でしょう。行政と司法にもいろいろ問題はありますが、政治と比較したら、ずっと健全でまともです。特に、これは佐藤氏も認めていることですが、特捜はしっかりしているそうです。

ですから、司法が非常手段として、前に出ることは必要なのかもしれない。

百歩譲ってそこまでは認めるとしても、そこで政治に一撃を加えたら、司法はすぐに持ち場に復帰しなくてはいけないのですが、それができるかどうか。

佐藤氏は、「特捜はこれまではそれなりの思慮があり自制ができていたが、今回は、それと違う傾向がある」と言っています。リークの使い方が戦略的でなくて冷静さを欠いているように見えるそうです。

それで、星飛雄馬とか言ってます。星飛雄馬は魔球の投げすぎで自分の腕を酷使しすぎて、最後に自分の腕の腱を切ってしまい、投手生命を失ってしまいます。

それと同じように、このまま司法・行政優位の状況が常態化してしまうことで、日本がとんでもない方向に行ってしまうのではないか。それを懸念しているのではないかと思います。

言うまでもなく、現在は、さまざまな意味で、日本も世界も新しい状況に直面しています。新しい状況に対応できるのは、政治だけです。

政治というプロセスを拒否するということは、何も決断しないことです。

状況が変化し続ける時には、決断しない、決定しないことに最も大きなリスクがあります。間違った決断でも何らかの決断をした方が、決断しないことよりマシなケースが多々あります。

もちろん、「改革しない」という選択もありますが、新しい状況に古い枠組みで対応するということは、それ自体が新しい枠組みであり、一つの決断です。そこには、今までの経験では想像できない新しいリスクがあります。これまでうまくいっていた古い枠組みを復旧すれば、回りの環境が自動的に元に戻ってくれる、というわけにはいきません。

「改革しない」という選択も、そのリスクを含め、それを責任を持って選択する主体が必要であり、それは政治のプロセスの中にしかありません。仮に「政治プロセスに制約を加え、司法・行政主導の配下に置く」というのが世論であるとしても、その選択そのものは司法・行政でなく政治プロセスの中で行なうことが必要です。

別の言い方をすれば、次の政権は、自民党でも民主党でも大連立でも小党連立でもなんでもいいから、できるだけ内閣支持率の高い内閣にしなくてはいけない。たくさんの大事な決定を素早く行う必要があるので、内閣支持率の高い内閣が必要です。その前の段階で、選挙の前に、国会で足を止めてノーガードの叩き合いがあることが大前提ですが。


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