ダウンロード違法化はグーグルの一極支配を加速する

ダウンロード違法化の問題については、これがよくまとまっていると思う。

特に、「そもそも議論すべき当事者がそのテーブルに集まっているのだろうか?」という指摘が重要で、

でも、権利者団体というものは決して新しいビジネスモデルを構築する組織体ではなく、限られたコンテンツ収益の入り口(補償金を収益と看做すのには若干抵抗がありますが)を保存・維持する立場ですから、やはりどうしてもネット=ダークサイドの意識からは離れられないのでしょう。

そして、その結果として(制度イノベーションが進まず)コンテンツの国際協業ネットワークからますますビハインドしていったとしても権利者団体の掲げるミッション(存在理由)からすれば問題の無い(=責を問われない)ことなのです。

権利者団体を責めてはいけない。彼らの任務は、既にあるビジネスを守ることで、彼らはきちんと自分たちの仕事を(勤勉に!)しているだけだから。

問題はその外側にある。

既にあるビジネスやシステムを守ることだけで、我々の文化や生活が守られるという前提でできている政治の枠組みが問題なのだ。

もちろんそれは大きな間違いで、近いうちにそれは強行突破されるだろう。

今の段階で、ゲリラ的なグレーなビジネスを排除することは、その強行突破が行なわれる時に、黒船と競合する主体がいなくなるということだ。

たぶん、YouTubeだけがいずれ合法化されるのだろう。適法マークのついたサイトで面白いのはYouTubeだけになり、クリエイターも二次創作者もユーザもみんなYouTubeを利用せざるを得なくなる。YouTube以外にアップロードすることもYouTube以外からダウンロードすることも違法になり、YouTubeだけが合法になる。

ダウンロード違法化の元でYouTubeをどうやったら適法にできるのかは知らないけど、そうしなかったら、一国まるごとGoogle八分だと宣言されたら、そうするしかないんじゃないかな。

高品質化したYouTubeなのか、Joostなのか、Miroなのか、MySpaceなのか、何が黒船になるのかわからないけど、黒船はやってくるよ。

アテンション=力で、力を背景にして開国を迫られれば、どうしようもない。

そもそもグーグルの本当のアドバンテージは情報発電所だ。それ以外のことは全部真似できる。真似してうまくやれば、グーグルよりたくさんのアテンションを集めることは可能だ。しかし、それを処理するには情報発電所がいる。分散ファイルシステムから、数十万台のサーバの電気代を節約する方法まで、グーグルには情報発電所のノウハウが集まっている

世界規模でスケールアウトする、そういうノウハウを理論でなく実践で試せる場はグーグルしかない

その情報発電所という基礎技術に対抗できるものはP2Pしかなくてその技術を理論でなく実践で試した人が日本にいて、このタネを育てていけばP2Pの分野で日本は完全に先進国になれたはずなんだけど、それをつぶしてしまって、次はこれですか。

結局、日本の政府は業界の業界による業界のための政府であって、業界というものが存在しない所は見えてないし関知しないということだろう。

ただこれは、談合とか癒着とか既得権益の保護という話ではない。日本人の意識の中に「オオヤケ」はあるけど、public という概念がない。政府はむしろその意識を民主的に反映して、「オオヤケ」を体現した業界というものを通して統治するスタイルを徹底させているのである。

IBMは日本のハードベンダーと競合していたし、マイクロソフトは日本企業にパソコン用のOSを供給していた。過去の黒船は、何らかの形でどこかの業界と接点を持っている。業界から情報収集していれば、視界に入ってくる黒船だ。

それに対して、グーグルは業界を一切作らない企業だ。グーグルは public な所だけで企業活動をする。だから、規模がいくら大きくなっても日本政府には見えないのだ。

業界を通してグーグルが見えてきた頃には、全てが終わっているだろう。