はてなスターとはてなメッセージはEメールを駆逐する

はてなスターは、とりあえず、何をするサービスなのかわかりにくいことが一番面白い所だと思う。何なのかわからないので、しばらくの間、これを読み解く記事でブログ界がにぎわうことになるだろう。

それで私も頭をひねって考えてみたのだけど、はてなスターは認証系プラットフォームと見るべきではないかと私は思う。

その意味は、難しいことを言うより、ブログ以外のサービスに星がついている様子を想像すればわかってくる。つまり、YouTube2ちゃんねるの個々のアイテムに星がついていることを想像するのだ。

その星をクリックすると、その動画やレスを投稿した人に拍手を送ることができる。その人が自分のFriendになっていれば、コメントをすることができる。

これは、サイトの運営者、つまりYouTube2ちゃんねるはてなスターの機能を実装しないとできないことだ。だから、それが実現するかどうかはわからないが、はてなスターの究極の目標は、こういう感じで、ブログだけでなくありとあらゆるネットサービスに星がつくようになることだろう。

これが何を意味しているかと言うと、星が「自分が誰であるか」を証明するものになるということだ。つまり、星に埋めこまれた、はてなの中でのIDが、ネットの中にあるたくさんの場を通じてのID、身元証明になるのだ。

そういうIDを持った人同士が、互いに拍手しあうことで、ゆるく揮発性の高い友達関係を、はてなスターというプラットフォームの上に構築することになる。これは容易に想像できるように、SNS的なコミュニティに発展していく可能性がある。

ただ、はてなスターのIDは、自分が拍手されないと承認される立場になることができない。つまり、オープンなコンテンツを何か持ってないと実質的に参加できないものであり、そこが完全に閉じられたSNSとは違う所だ。オープンなコンテンツとは、まずはブログだけど、動画の投稿やTwittertunblrtumblrのようなミニブログ的なものや掲示板への投稿から、とにかく何でもいいからネットの中で活動することが必要となる。

SNSは、コンテンツ自体を特定の人にしか見せないで囲いこむが、はてなスターは、コンテンツはオープンにして、その上にメッセージを送り合う関係のみを上からかぶせるように構築するものだ。

だから、同時にリリースされた、はてなメッセージがこれと切り離せない関係にある。

はてなスターが、統合身分証明ならば、はてなメッセージは、統合受信箱になる。

はてなメッセージは、「スパムの来ないEメール」になるだろう。

Eメールには、「すでによく知っている人からのメッセージを受ける機能」と「知らない人からのメッセージを受ける機能」がある。前者は、既存のSNS等の閉じられたシステムで代替可能だ。これだけスパムが氾濫していてもEメールの有用性が無くならないのは、後者の機能、「知らない人からのメッセージを受ける機能」が必要だからだ。

部分的に後者の機能を代替するサービスは、すでにいくらでも存在する。たとえば、ブログのコメント欄がそうだ。しかし、「知らない人からのメッセージ」を受けいれるものは、必然的にスパムの温床となる。Eメールを置きかえるサービスが存在しないのは、そういうものは、結局、スパムを排除することができなくなってしまうので、その点でEメールと同等であり、これを超えることができないからだ。

はてなスターの友達関係の上に構築されたはてなメッセージは、潜在的には、この問題を解決できる可能性があると思う。

たとえ「知らない人」であっても、その人がネットの中に何らかのコンテンツを持っていて、そこに星が配置されていれば、その星をクリックすることで「知らない人」ではなくなる。はてなメッセージは、このひと手間をかけることで、Eメールの「知らない人からのメッセージを受ける機能」を置きかえようとしているのではないだろうか。

これから、はてなスターがある程度普及したとして、ある時点でユーザは自問自答することになる。「私は星を持たない人からのメッセージを受けたいだろうか?」それにNOと答えた人は、メールをやめて、はてなメッセージとIMやSNS等の閉じたシステムで全てのメッセージを処理するようになるだろう。そのメッセージは、いったん、はてなメッセージに転送され、そこではてなスター内の友達関係の隔りで分類されるだろう。FriendやFOFからのメッセージは携帯に転送したりして優先的に読む。遠い人からのメッセージを読む時は、その人が持っている星、つまりネットのどこかに存在するその人のコンテンツを目安にして読む。

それは、現在、メールより先にmixiで友達の日記を読んでいる人と似ている所もあるが、その受信箱は安全でありながら世界に開かれている所が根本的に違う。

もっと根本的に言えば、ネットに何かを書くことの危険とは何かということだ。

住所やカード番号を書くような物理的な危険は注意すれば回避できる。ネットに何かを書くことの危険とはフィードバックを管理できないことの危険である。フィードバックによって自分が予想外の感情的な影響を受けることの危険である。

信頼関係や受信箱を管理できるならば、自分のコンテンツを公開することの危険はかなり少なくなる。気軽に公開して、「知らない人」からのフィードバックを気軽に受けることができる。

はてなは、そのフィードバックの部分のプラットフォームを構築しようとしているのではないだろうか。