Uncategorizable宣言

理系/文系という言葉を使うとだいたい評判悪いですが、私は、この言葉が好きだし有用だと思ってます。なぜかと言うと、理系/文系という言葉は哲学的でもあるし政治的でもあって射程が長いから。

物事を「文」で理解するか「理」で理解するかというのは、哲学の根本の一つだと思います。つまり、世界は「言葉」によって把握すべきか、「論理」によって把握すべきかということ。

一方で、理系/文系という言葉は、たとえば役所や大企業の中では、「あの人は優秀だし人望もあるけど、理系だから所詮あそこ止まり」みたいな、非常に下世話な政治的なニュアンスもあると思います。

どちらか片方の意味で使おうとすると、もう一方がついてきてややこしい。若い人が進路を決めようとすると、この両方の意味が同時に襲いかかってきて大変だと思いますが、そういう言葉の方が現代ではむしろ有用だと思うのです。

現代社会というのは、いろんなレベルがからんだ問題であふれています。問題が、単一のレベルで処理できるなら、それはだいたい20世紀に片付いてしまってる訳で、本当に問題なことを論じようとすると、問題の複数の側面を同時に射程に入れなくてはならない。理系/文系みたいな言葉は、低コストでそれをやるには適してます。低コストがいいか悪いかはまた別の問題ですが。

それで、これに匹敵する射程を持っているのが「グーグル」という言葉。

脳内Google社における想像上の社内事情を我が事のように熱く語る文章の一例

まさにその通りで、私が熱く語りたいのは「脳内グーグル」のことです。ただ、「脳内グーグル」のことを語るには、リアルグーグルを引きあいに出すのが一番楽。リアルグーグルが無かったら、ここで書いている「脳内グーグル」のことを説明できないでしょう。

「文系が悪い。文系が全て悪い。文系を排除したら、もっとマシな〜」セカイgoogle化計画。誰か日本もgoogle化してください。

自分たちが思うベストの『世の中』を調達できない場合には、自分たちでマシな『世の中』を開発することもやぶさかではない」「グーグルとは、「文系が悪いメソッド」を実体化した会社である」なんと魅力的。

文系が悪いはとりあえず正しい

それで、はてなブックマークでは、私の「脳内グーグル」にはそこそこ支持が集まっているようです。これは、私がある程度普遍的な何かをうまく言語化できたからで、もうちょっとうまくやれば、もっと大きな支持が集まってくるでしょう。たぶん、他にもたくさんの「脳内グーグル」があって、その中で一番よい「脳内グーグル」が、ラリー・ペイジとサーゲイ・ブリンの「脳内グーグル」で、これが他の「脳内グーグル」をいくつか巻き込んでリアルグーグルとして実体化したのだと思います。

グーグルという言葉は、グーグル社の内外にたくさんある「脳内グーグル」の集合体で、たくさんの「脳内グーグル」はバラバラで互いに全く無関係のようでもありながら、たくさんの「脳内グーグル」が共振を起こしています。だからこの言葉の射程は大きいんです。

グーグルのことを語るなら、グーグルの是非より先に、グーグルという言葉の大きさを感じないといけないと思います。

グーグルの是非とグーグルの大小は、全く別の問題なんですが、グーグルが非と言う人は、たいていグーグルが小さいと言う。「小泉なんて俺から見たら人間が小せえ小せえ」とか場末の居酒屋でくだまいてる酔っ払いのように、気軽にグーグルが小さいと言う。そこで「グーグルはあなたが考えているよりよほど大きい問題だ」と言うと、「グーグル礼賛」とか言われてしまいます。こちらが言いたいのは、是非が簡単に言えるほど、この問題は小さい問題ではないと言うことであって、それを言うには、やはり、グーグルという言葉と同じようにたくさんのコンテキストをしょいこんでいる文系/理系という言葉を使うのが楽。

楽なのはいいけど、たまに(いつも)何言ってんだか自分でもわかんなくなりますが(笑)。

「グーグルはシリコンバレーにあるんじゃない、グーグルはみんなの心の中にあるんだ !」とか叫んで終わりにしようかな。

本書を読んで一番欲求不満になったのは、私が一番知りたかった事、すなわち「普通の法学」における時間感覚と「サイバー法学」における時間感覚のあまりの違いが一体どこに由来するのかということが解説されていなかったこと。

その前に気になっていたことがひとつあったんですが、弾さんが言っている「時間感覚のあまりの違い」というのは、非常によくわかります。

まあ、これ、やはり最大の原因は文系が頭悪いからだと思うんですが(笑)、もうひとつ理由があって、それは「普通の法学」は「根源的な悪」を射程に入れているからじゃないかと思います。

「サイバー法学」の対象とする「悪」と「普通の法学」の対象とする「悪」は、ちょっと違うと思います。やっぱり、「普通の法学」は、人間の悪の可能性に畏敬の念を持っていて、「どんなふうにがんじがらめにしたって、どうせ奴らは何とか抜け道を見つけるんだろうな」という諦めのような感情がある。「サイバー法学」の方は、人間がうまく扱えなかったら法律の方にバグがあるという考え方で、そこがスピードの違いになってるんだと思います。

最近の政府プロジェクトでは,やっても意味がないけれども,やればできると分かっている技術を,重層的な下請け構造でもって目的意識を持たない生産性の低い連中につくらせるものだから,誰にとっても案件としておいしくないけれども予算だけは粛々と食いつぶすのである.

確かに、一件当たりのコストが1600万円というのは、相当なものである。しかし、自治体行政の電子化に携わる人であれば、このニュースを聞いて、それほど「驚愕」する人は、多くないのではないだろうか……。(中略)筆者が昨年末のデータから試算・推定した、電子申請の「共同利用プロジェクト」の利用費用は、一件当たり1万円〜100万円であった。程度の差こそあれ、すべての自治体で実際の手数料収入をコストが大きく上回り、赤字たれ流しの状況である。

また話が変わりますが、こういうのは予算を食いつぶすだけではなく、技術者を磨り減らすでしょうね。仕様と実装の間で揉まれてプログラマーは成長するものです。私なんか、コンピュータのこともわからない癖に気ままに「あーせい、こーせい」とか言うお客様が(とってつけたような「お客様」(笑))憎くてしょうがなかった。帰りの電車で気がつくと1時間半ずっと脳内で客の悪口言ってたこともありますが、でもどんな最悪の客でも要求仕様は持ってました。「とにかく安くあげろでもたくさん稼ぐシステムを作れ難しいことは一切俺に聞くな全部おまえが考えろ何かあったら責任はおまえが取れ」それでもいいんです。「要求仕様」があれば、制約条件とそれを擦り合わせるのが技術者と言うもの。それで確かに自分は成長したと思うし、今なら本気で「お客様」と言えます。しかし、予算たれ流しが目的のこういうプロジェクトでは、要求仕様が存在しないに等しい。これでは技術者はいくら苦労しても成長できません。

人に一切の成長の余地が無い環境を与えるのは「根源的な悪」だと私は思う。

というか、それでも人は何とか成長の方向を模索して、それが大量の「脳内グーグル」を生むのだと思う。

私はそれを肯定も否定もする気はないが、もしオーマイニュースがそういう主観を持っているのであれば、みずからの立ち位置をステートメントとして明示すべきではないだろうか。もしそれをあえてしないのであれば、左右新旧のぶれのない客観報道に徹するべきではないのか。

しかし高度経済成長もバブル経済も終焉を迎え、総中流社会は崩壊した。人々の拠って立つ基盤は失われたのである。身も蓋もなくなったこの新しい世界では、民主主義という言葉ひとつをとっても、それがどのような定義で語られているのかを厳しく問い詰められる。アメリカのブッシュ大統領の語る民主主義と、イスラム圏に住む人たちの語る民主主義、共産中国の人たちが語る民主主義は同じ用語であっても、その意味は著しく異なっている。

だからこそ、この時代におけるジャーナリズムは「なぜ私がこの問題について怒りを覚えているのか」「なぜ私が感動したのか」「なぜ私はこれを批判するのか」という前提を、きちんと説明しなければならない。書き手と読み手がお互いの共通基盤を手探りしながらさぐりあて、それを確認しなければ安心して記事を読めなくなってしまったのだ。

主観/客観やマトリックスという言葉は、ちょっと単純化しすぎだと思いますが、ここで言っていることはよくわかるし、共感します。

グーグルの「大きさ」を理解しているジャーナリストの正しいあり方は「立ち位置」へのこだわりでしょう。「立ち位置」を表明する言葉にも特定の立場が表れるとか言いだすと、何も言えなくなってしまうので、それは哲学者にまかせておけばいい。ジャーナリストならば、走りながら考えるべきでその時の最低条件は自分の「立ち位置」について考え続けることです。

「文系がバカ」と私が言うのは、いくら言われてもこういうことが全く理解できない連中のことですから、その点は誤解なきよう、よろしくお願いします。ここまで読んだ人にはそういう人はいないでしょう。

文系でもアーレントル=グウィンのように「根源的な悪」について考えた人は、その大きさをよくわかっていて、それが同時に人間の可能性の大きさであり世界の大きさであることをよく知っている。そういう人はいくらパソコン音痴でもグーグルの大きさが直感的にわかると思います。だからやっぱり立ち位置が大事。

それでブロガーとしての私の立ち位置は何かと言えば、「Uncategorizable(分類不能)」であること。このブログは、どういうフォルダーに入れても据わりが悪いと思います。

据わりが悪いエントリを書き続けることが、自分に与えられた使命ではないかと思って、頑張ってます。

でも突然力尽きてまとめに入りますが、アーレントル=グウィンクラスの巨大な文系を私は釣りたいのです。しかし、グーグルは巨大な理系であるけど人間ではないので、私が求める巨大な文系も人間ではないでしょう。