新人向けネットワーク教育超オススメ本

「新人教育で今年はネットワークについて教えたいが、何かいい本がないか?」と聞かれて、探してみた所、ベストな本がありました。


自分のペースでゆったり学ぶTCP/IP (絵でラクシリーズ)
自分のペースでゆったり学ぶTCP/IP (絵でラクシリーズ)

インターネットには、当然、さまざまな技術が使われていて、また当然、「通信」というのは、その基礎中の基礎なんですが、これが実に教えにくい代物です。基礎と応用と応用の応用とそのまた応用、以下何レベルもの応用の応用が、ごちゃごちゃになって使われていて、またそのそれぞれの応用レベルXがすごい勢いで進化しています。
ブログだRSSWEB2.0Winnyだと応用の先っちょだけを追っかけていたら、竹馬に乗っているようなもので、足元がふらついてしまい、いつコケるかわからない。
かと言って、やはり何事もまず基礎からじっくりとやるべきだと、LANケーブルを通る電気信号のことから勉強していたら、日常的に触っている「ネット」からあまりにもかけ離れた話になって、そこにつながるまで何年もかかってしまいます。
そこで、基礎から応用レベル18くらいの間で、どこを基盤としたらよいかと言ったら、TCP/IPを中心とした「階層化プロトコル」の原理であることまでは、何となく私にも想像がつく所なんですが、ある程度、ネットの「今」みたいなものを射程範囲に入れて「ゆったり学ぶ」にはどうしたらよいか、そこまで具体的に考えると、これは言うは易く行うは難しの典型例。
「自分のペースでゆったり学ぶTCP/IP 絵でラクシリーズ」は、その難問に対する100%完璧な回答と言ってもよいのではないか、私はそう思いました。
それで、このタイトルから想像すると、マンガとくだけた文調で本質を回避してるだけの本に思えてしまいますが、実際、「まいどどーも、くろくま郵便です」とか絵本みたいなやわらない文章なんですが、書いてあることはなかなかきちんとしている。
実は、こういう類の本は、細かく見るとけっこういいかげんなものが多いので、新宿の紀伊国屋でじっくり立ち読みしました。似たような本はいっぱいありましたが、他の本はやはり間違いとは言えないけど、なんかしっくりこない記述があるんです。どうも書いている人が書いてあること以上のことを理解してない気配を感じる。その気配が無いと、今度は逆に文章も硬すぎて、内容が詰めこみ過ぎで、新人はイヤになっちゃうだろうなという感じ。
それが、この本だけは、項目的にはかなり控え目なんですが、単にわかりやすさ、噛み砕きやすさで決めたことではなくて、時間をかけて本質を抜き出して、慎重に項目を絞りこんでいる。そして、そのことがわかりやすさにつながっている。それで「これはいい本を見つけた」と喜んで帰ってきたんですが、帰ってきて著者名で検索して驚きました。

OSPFとかの解説までしてて、完全にネットワークの専門家じゃないですか。
著者の網野衛二さんという人は、「よく勉強している本職のライター」か「文才のある技術者」なのか、私は絶対前者だと思いこんでいました。「ゆったり学ぶ」のタイトル通り、読者をせかす所が無いし、項目の絞りこみ方が絶妙だったからです。技術者でもこんな本が書けるんですね。
まあ、逆に言えば、内容の技術的な正確さは保証されてるということなので、それを立ち読みで見切った自分が偉いとも思いましたが。
著者のサイトに披露されている知識量からして、この本は本当にごく一部で「爪の垢」くらいのものですが、これは煎じて飲む価値のある「爪の垢」ですね。これを熟読して足場と地図を作っておけば、ランダムに入ってくるさまざまなニュースが、ちゃんとした知識として蓄積されていくと思います。