ワンイシューを集団知がマニフェスト化する

上の「知識人 VS 小泉さん」というエントリを書いて、いくつかコメントに返答しているうちに、自分でもあいまいだった「小泉政権集団知を動員している」ということの、具体的なイメージが少しだけ明確になってきたので、それを補足してみます。

今回の総選挙は「郵政民営化」のワンイシューポリティクスと言われていますが、そのワンイシューを巡って、過去に類をみないほどの政策論議が行なわれています。それは、官と民の問題として、マクロ経済(財政)の問題として、対米追随という外交の問題として、族議員に代表される日本の共同体的価値の問題として、地方分権の問題として、言論抑圧につながる強権国家の問題として、弱者や差別の問題として、21世紀の基幹産業が何になるのかという問題として、人口構造の変化にどう対応するのかという問題として、官僚の政治支配の問題として語られています。他にももっともっと多様な論議が起きていると思いますが、それら全てが「郵政民営化」というワンイシューの元に連結されています。

その連結した議論が、投票の日までに、日本の現状を診断した結果として集約されるわけです。それが小泉さんの本当のマニフェストであり、9月11日には、その仮想的なマニフェストを信任するか不信任するかを問われるのだと思います。そのマニフェストは、自民党を含む全ての政党のマニフェストと違って、可能な限りのマイナス面が含まれています。いいことと悪いことが全て正直に書かれたマニフェストです。

そのような集約が可能なのは、「郵政民営化」という基準点があるからです。ひとつの基準点から、かくも多様な議論が生まれるのですから、二つ以上の論点があったら、発散してしまいます。

集団知というのは、あるプロセスの中に実体を見なくては見えてきません。今起こっていて、9.11に向けて集約されていくこの議論を、ひとつの実体として見ないと、見えてきません。それは、客観的に測定できるようなものではなくて、見たい人だけが見るものかもしれません。

ネットビジネスに携わる人の中に、そのようなダイナミックなプロセスの中にひとつの知性を見る人が増えつつあって、その見方は、認識や予測や議論の為に役に立っています。それは、具体的な実体として提示できるものではありませんが、単なる多数決や衆愚ではなく、ひとつの筋が通ったものです。

私は、その仮想的なマニフェストには、小泉さんに批判的な人も含めて、多くの知性が意図せず共同作業をした結果に等しいものが含まれていると思います。そして、小泉さんはそのマニフェストに制約されると思います。そこに無い政策を小泉政権が実施しようとしたら、小泉人気は一瞬にして落ちこんでしまうと思います。

だから、私はこれくらい安全で正統的で有効な政治手法は他にないと思います。