43人の「進言」しそこねる男

MSN-Mainichi INTERACTIVE:明らかとなるJR西日本の体質


「目上の人に言いづらかった」。事故当日、ボウリング大会を開催していた天王寺車掌区の社員43人のうち、事故を知りながら上司に中止を進言しなかった13人の弁解だ。ほとんどは、年代の若い人たちで上司や先輩への遠慮があったという。

記者会見で、JR西の幹部も「進言」という言葉を使っていた。

「進言」という言葉が意味するのは、この場合、各自が自分の判断でボーリング大会を欠席することはできなくて、区長に「進言」して区長が中止を判断して全員が一斉にやめることしか、あり得なかったということだ。意地悪く言えば、それを無批判で伝えているマスコミも暗黙にその見方に同意している。

つまり、このボーリング大会は組織として会社の指揮系統の元で一体となって実行する行事であったわけで、ほとんど業務の一環でしょう。

大変な事故があったからと言って、他の路線を止めて復旧を支援したり追悼の意を表すことはできない。他の電車は動かすべきでボーリング大会は中止すべきだったと私も思うが、これは、定常業務のうち何を止めて、何を継続するか、その判断を間違えたということで、一面に載せて批判するほどのことではないような気もする。

余談だが、マスコミの悪者探し、悪者叩きは常軌を逸していると思う。だいたい100kmちょっとで転覆したメカニズムはまだ何も解明されてないのではないか。もし速度違反が第一の原因でないとしたら、過密ダイヤとか日勤教育とか旧式ATSの問題は、事故と直接関係ないことになる。もうちょっと冷静に大局的に考えるべきだ。あらゆる「対策」は他のことを後回しにしてよいという判断でもある。

それはともかく、43人が集団知を働かせていたらどうなっていただろうか。各メンバーが独立しておのおのどうすべきか考えた上で、優れたシステムで意見集約したらどういう結果になっていただろうか。

この人たちの人間的な良識を最低レベルに見積って予想しても、おそらく、「これを強行したら後で思いっきり叩かれるかも」という懸念が誰かの頭の中に浮かび、その知は共有されていただろう。

突発的な予想外の事態においては、「進言」しないと動かないようなシステムはうまく機能しないということだ。突発的な予想外の事態は今や日常的に起きており、「進言」に依存しないシステムがあちこちで必要とされていると思う。

ということを、とりあえずマスコミに「進言」したいのですが。