意見集約システムについての "The Wisdom of Crowds"

梅田さんが、Wisdom of crowdsというキーワードについて書いていて、H-Yamaguchi.net: The Wisdom of Crowds: Why the Many Are Smarter Than the Few and How Collective Wisdom Shapes Business,Economies, Societies and Nationsという言い出しっぺの人の本の書評を紹介している。その記事で、山口さんは問題の本を


本書の主張は、ひとことでいえば、「適切な状況の下では、人々の集団は、その中で最も優れた個人よりも優れた判断を下すことができる」ということである。

とまとめられ、「適切な条件」を次のようにリストアップした上で、

  1. 意見の多様性
  2. 各メンバーの独立性
  3. 分散化
  4. 意見集約のための優れたシステム

ここでカギになるのは、(4)の意見集約システムであるとおっしゃっている。

まったく同感であるが、「意見集約システム」としてどういうシステムが必要であるか、望ましいかに関して、この「集団知」なるものが、再帰的に作用していることに注目すべきだと私は思う。

つまり、ブログがいいのか2ちゃんねるがいいのかもっと他のものがいいのか他のものがいいならどういうシステムであるべきか例えばソーシャルブックマーク等がそういう方向に発展する可能性はないのかあるいはポドキャスティングのような音声メディア映像メディアとの融合は必要ないのかそういえばデジタルディバイドという奴はもう気にしなくてよくなったのかそんなことはないだろといったさまざまな要因が複雑に関連した難しい課題が、ある。

この最もホットな難問を「集団知」が解決しつつある。

「解決しつつある」と断言していながら、「集団知」ほど賢くない私にはその答がまだ見えないのだが、問題が解決されつつあるのは確かだ。「集団知」がそれくらい賢いことくらいは、賢い人はみんな知っている。

その結論が誰にでも見えるようになった時に、「集団知」に対抗できるだけの賢さが人類にはもはや残されていない可能性が強い。その圧倒的な賢さを、私は創発的権力と呼んだのだ。

例えば、「文化の多様性が損なわれる」とか抗議したとしても、「集団知」さんは、そんなことは折り込み済みで、当然できあがった意見集約システムには、「文化の多様性」を維持できるような配慮がなされている。「集団知」さんは理系バカのナードではなくて(でもあるのがそれだけではなくて)、ポストモダンやらサブカルやらカルチャルスタディーズやらにもやたら詳しい。なまはんかな知識では対抗できなくて、結局、論破されてしまう。

そのような圧倒的に賢い「意見集約システム」のもとで、

  1. 意見の多様性
  2. 各メンバーの独立性
  3. 分散化

をどのように確保したらよいのかが、本当の問題なのだ。

ということで、私は「打たれ強い人文系」が必要とされていると思う。