bewaadさんの人権擁護法反対論批判

コメントでjounoさんに紹介されたものですが、大変わかりやすい解説でした。上記のような危惧は的外れであるという批判です。

私としては、基本的には納得したのですが、わからないのが、古賀誠氏が熱心に推進しているのは何故かといういうことです。郵政民営化問題で党内に敵を増やしたくない時期ではないかと思うのですが、bewaadさんがおっしゃるような意味しかない法案であるとしたら、「賛成論はわずか」という状況の中で、どうしてここまでがんばるのか。そこが理解できません。

法律の勉強であれば、bewaadさんの説明を丸暗記して終わりにしますが、政治の世界ですから、そのあたりの動きをもう少し見守りたいと思います。

もし、匿名掲示板(仮)のサーバ押収に関係する法律をbewaadさんに同じように解説していただいたら、どうなるのでしょうか?「そのようなサーバ押収は絶対に起こり得ない」という結論に達して、私は安心してしまうような気がします。

そのあたりを理詰めできちっと議論することも重要なことですが、それだけに頼るのも違うような気がします。

それで、復習をかねて、bewaadさんの説明を自分なりに整理してみます。

まず、この法律は刑事罰について規定するものではなく、人権擁護委員というのは行政組織と位置づけられるそうです。警察とその他の行政組織は、権限も法的な位置づけも根本的に違うので、「人権委員会の行動を監視、抑制する機関がない」ことは問題がないということになります。例えば、役場の戸籍係を監視、抑制する機関がないのと同じことだということでしょうか。

行政組織の監視、抑制が不要な理由は、行政組織というものは、法的には一般人と同等の位置になるので、刑事告発においても民事訴訟においても、司法に対して、民間人以上の権限は与えられない。つまり、どっちの言い分が正しいかを裁判長が公平に判断して決めるわけです。

つまり、具体的な措置を引き出す為には、司法という関門があって、単独で何かをすることはできないということでしょうか。そして、その際の司法の判断において、有罪、有責とされるものは、現行法の範囲に限定されていて、人権擁護法がそれに何かの新しい要素を加えることはない。(ということだと思うんだけどなあ)

ただ、その「行政」の範囲内では、チェックなし独自の判断で強制的に動ける部分があるわけです。ひとつは「当該行為に関する説示、人権尊重の理念に関する啓発その他の指導」、それと、立ち入り調査に協力しなかった場合の、上限30万円の過料。これらの措置については、人権擁護委員単独の判定でなし得るわけですが、それが即「有罪」ではないということですね。

人権擁護委員の「クロ判定」が「有罪」ではないという所が、どうも納得しがたいというかわかりにくいし、一般的にそのような理解が得られるかどうかが疑問です。一方的な「人権侵害クロ判定」を受けて裁判になった場合に、無罪判決を勝ち取るまで、会社にそれまで通り支障なく勤務していられるかどうか。

もし間違ってクビになってしまったら「だからおまえら民度低いんだよなあ、行政措置と司法判断の区別もつかんのか。bewaadさんのサイトよく読んで勉強しろよ」と、社長に言えばいいのでしょうか?

もちろん、人権擁護委員は人権委員が選び、その人権委員は国会承認が必要なので、理論的には国民の意思が反映されているわけですが、やっぱり不安が残りますね。

例えば、「水道料金滞納」という行政判断は、何のチェック、監視もなく水道課単独の判定で行なわれます。それが間違って出てしまう可能性はあるわけですが、誰もがそれを受け入れています。間違って「滞納野郎」にされてしまっても、最終的に強制的な財産没収になるまでは、司法の判断が入るし、名誉回復や損害賠償の手段はあります。この場合、水道課の権限や法的な位置づけは、民間企業と同等です。さらに、水道課は選挙によって選ばれた首長によって監督されています。

それを受けいれているのだから、人権擁護法案も同等に受け入れるべきである、とbewaadさんはおっしゃっているように、私は理解しました。

「おまえは人権侵害野郎だ」というバツ印は重いものであって、たとえ強制力が無く司法の場で回復可能なものであっても、「行政」の範疇にはそぐわないものであるような気がします。「水道料金滞納野郎」と「人権侵害野郎」では、法的な位置づけは同じでも、一般人の受け止め方が違うので、その効果は全然違います。

この問題は、警察と司法の増員等の現行組織の強化で対応するのが望ましいのではないでしょうか。

(3/19追記)

こちらに続きがあります。