クリシェの機能

今日の最初の記事でリンクしたswan_slabさんの記事はもうひとつ重要な論点を含んでいる。


こうしたラベリングは多かれ少なかれ、言説のマッピングに役立つかぎりにおいて無視することはできないし、他者に予測可能性を与える点で有効であろう。他者の言説に予測可能性が与えられるかぎりにおいて有効であるということは、例えば、「aさんはbさんをB集団の要素とみなしている」と認識を共有することによって、我々は「aさん」ではなく「aさんの言論」にどのようにアクセスすればいいかを判断できるからである。

例えば、上の記事で私とsbさんは「ネット右翼」という言葉を使っているが、私は「ネット右翼」というまとまりのある実体が存在するとは思ってなくて、その中にはいろいろな立場があると考えている。おそらくsbさんもそうだと思う。

それでも「ネット右翼」という言葉を使ってコミュニケーションするのは、その言葉を使う人の文脈に乗って「ネット右翼」という概念を共有しようとしているのではないだろうか。

だから、基本的にラベリングにしか使われないクリシェにも使い道はあると、私は考えている。

なお、これと匿名との関連についてはswan_slabさんと若干違う考えを持っているが、それはここでは省略。