[?date=20030922#p07:title=すでに起こった未来]の話

ある旅客機が「すでに起こった未来」空港に着陸しようとしました。しかし、車輪が故障していて動作しませんでした。そこで、機長は着陸を中止して上空で旋回運動を始めました。

その旅客機の座席番号47番には凄腕のパイロットが搭乗していました。47番の男は、その旅客機がずっと旋回運動を続けているので、乗務員に「この旅客機は胴体着陸をした方がいいと思う。自分なら安全に胴体着陸ができるので、自分に操縦させてくれないか」と申し出ました。

しかし機長は「胴体着陸を行なうと、機体に大きな損傷が予想されるし、場合によっては乗客にも危険がおよぶ」と言って、男の申し出を断りました。47番の男はなおも「胴体着陸のダメージは最小限におさめるから、ぜひとも操縦させてほしい」と食い下がりました。機長は「君の案は話にならない。こうして旋回していれば、一切機体に損傷はないのに、胴体着陸をしたら、どれだけうまくやってもかなりの損害は避けられない」と言いました。

そこで、仕方なく男は、操縦室に侵入して無理に機体を着陸させようとしましたが、失敗してつかまってしまいました。乗務員たちは、男をボコボコにして縛りあげました。

乗客たちは「胴体着陸だって。すごく危険なことを言う人だな。きっと、車輪が出ないのもアイツのせいだ」と噂しています。

なかには冷静な人もいて「車輪が出ないことまで彼のせいにするのはおかしい。だけど、操縦室へ機長の許可なく入ろうとすることは法律に違反しているから、縛りあげることは認めるべきだろう。たとえ、能力の劣る機長でも、機長は機長だから尊重すべきだし、旋回していれば機体に傷がつかないという彼の主張も一理ある」と言っています。

47番の男は、縛りあげられて「そうだ、自分は確かに、機長の許可なく操縦しようとした」とだけ答えました。乗務員たちはこれを聞いて、自分たちの行動が認められたと考えて安心しました。

おそるおそる「彼は乗客の安全を考えて行動したのですよ」と言う人がいましたが、機長に睨まれると、自分も縛りあげられるのかと思い、黙ってしまいました。

さて、「すでに起こった未来」空港で待っているドラッガーさんは、この旅客機の着陸を見ることができるでしょうか?彼に残された時間は長くないですが、我々に残された時間も‥‥‥

(追記)

解説編も見てください。