In our shame is our glory.

ファンタジー作家なんて楽な商売で「彼は山を動かした」「彼は地球をまっぷたつにした」「彼は銀河系を吹き飛ばした」・・・なんでも好きに書けます。ハードSFのようにいちいち説明をつける必要もありません。

しかし、賢者を出す時は要注意。「大賢者はその時、とても知恵のある言葉を言った」では、今いち説得力がありません。「知恵ある言葉」を断片でもいいから実際に書かないといけない。こうなると、余計大変です。賢者の言葉を言うには、結局、自分が賢者になるしかない。

ゲド戦記第三部にまさにそういう賢者にしか言えないセリフを見つけました。


'I see why you say that only men do evil.I think. Even sharks are innocent, they kill because the must.'


'That is why nothing can resist us.Only one thing in the world can resit an evil-hearted man.And that is another man.In our shame is our glory.Only our spirit, which is capable of evil, is capable of overcoming it.'(The earthsea qualtet part III. The farthest shore P 334)

自分なりに訳してみます。


「『本当の意味の悪をするのは人間だけだ』とあなたが言う意味がわかりました。確かに、人と比べたら鮫だって可愛いいもんです。鮫は他にやりようが無い時しか、他の生き物を殺しません」


「だから、わしら人間にかなうものはないのさ。まして悪い心の宿った人間には抵抗できるものはいない。それができるのは、やはり人間だけなのだ。我々人間にはどうにも見ちゃあおれんような恥ずべき所がたくさんあるが、まさにそういうものの中にわしらの真の輝きがある。悪をのりこえることができるのは、悪をなし得るわしらの魂だけなのだ」

私は shame の中に glory を見つけたいんです。