多様性信仰〜「君が僕と違う考え方の人でうれしい」

もうひとつ、Russellさんの発想で面白いのは、「君が僕と違う考え方の人でうれしい」という雰囲気です。これは直接的に言葉になっていませんが、パッチが競合した時、「同じ問題について君と同じくらいよく知ってる人がいてよかったじゃないか」と言っています。同じ問題を違う目で議論できてよかったね、つまり、「君が僕と違う考え方の人でうれしい」ということです。

Linusの基準と自分の基準が違うことも、「どちらが正しい」という話にならないで、(パッチを採用してもらう為に)Linusの考え方を知ることで、自分が成長できて、それがうれしい、つまり、「君が僕と違う考え方の人でうれしい」です。

これはオープンソースの人が共通に持つセンスだと思います。オープンソースの事を「共産主義的」と非難する人がいますが、筋違いもはなはだしい。共産主義は「正解はひとつ、その正解は政府が知っている」という考え方です。資本主義も「正解はひとつ、その正解は市場が知っている」という考え方です。私に言わせると、どちらも最適化信仰です。

オープンソースは多様性信仰、そこが根本的に違います。みんなが違っていることがハッピーなんです。違っているパーツに優劣をつけようとはしない、その代わりにそれを組合せる段階で「包括的妥協競争」をします。ここで最適な解が選ばれるという保証があるので、個別の要素は、多様性があるほどいいわけです。