宅間守と共有できるもの

宅間守と10分間世間話をしなきゃならない状況に追いこまれたら、何を共通の話題にできるだろうか。彼はありとあらゆるものの価値を否定しているように見えるが、実はそうではない。

と言っても、「心の闇」がうんぬんというあいまいな話でなく、かなり確実な根拠があるシンプルな話である。

彼は合コン用に、社長と医者の肩書をつけた自分の名刺を偽造したそうで、この二つと国立小学校に一定の価値を認めることはほぼ確かである。そして、その三点については俺もそれほど異論はない。それらに関する視点を共有することは十分可能だと思う。

「金持ちの息子(または社長または医者)は楽でいいよな」などと話しかければ、10分くらいなら無理なく歓談できる。

自分の命の価値よりその三点の価値の方が、彼にとっては受け入れやすい価値観であり、何ごとにも逆らってきて今もとことん逆らい続ける彼も、そこだけは社会の一方的な押しつけを、独自の解釈を加えることなくまっすぐに受けいれている。

他のことも同じ方法で教えれば、全部素直に受けいれたと思うのだが、無理だったのだろうか?