ところでいったいGoogleは何人月?

リファーを見ると、毎日、毎日、Googleに「圏外からのひとこと」と打ってからここに飛んでくる人がいる。毎日見るんだからブックマークしたら?と言いたくなるが、人のことは言えない。俺も常にGoogle経由で行くページがいくつかある。

だいたい最近はブックマークをしなくなった。将来使うかもしれないツールに関するよい解説記事なんて見たら、昔だったら確実にブックマークしておいた。だから、どんどんブックマークが膨らんで定期的に時間を取って整理していたものだ。しかし今は、そのツールの名前を打てば出てくるから「使うかもしれない」ツールだったら、まずブックマークしない。自然とブックマークを整理する時間も不要になった。

Googleができてから、誰にでもこんなふうに何かサボっていることが二、三あるはずだ。週に一度何か楽をして5分得したとする。世界中のインターネットユーザが2億人として、10人にひとりがそういう楽をしたとする。月あたり、5分×4回×2000万人=4億分、8時間労働20日稼働で人月にして41666人月だ。人月単価をいくつにしていいのか謎だが、20万円とすると一年で約1000億円だ。

つまり、Googleという会社は世界に対して1年に1000億円の価値を産み出していることになる。もちろんこれは直接的な工数である。実際にはこれによってアイディアが生まれたり、人と人が出会ったりして、間接的にはるかに多くの富が創出されている。これだけの富がたった650人の会社(フル稼働して年7800人月)から生まれているのだ。つまり彼らは、自分らが世界に与えるもののほんの数十分の一を受けとっているだけなのである。

これが"Great People Can Manage Themselves"(以下略してGPCMT)という必殺技の恐るべき効果なのだ。

それで、Brilliantな奴がこれで打ち止めかと言えば、そうではない。馬鹿な管理者に足を引っぱられてるBrilliantな奴は世界中にたくさんいる。金持ちには馬鹿が多くても、資本というのは馬鹿ではない。GPCMTで稼げるなら、資本はこれを見逃さない。世界中から根こそぎBrilliantな奴を集めてGPCMTで稼ごうとする。その結果、あと1000社Googleができたとすると、たった65万人の人によって年に100兆円の富が世界にばらまかれることになる。

今必要なのは、このような極端な生産性の偏在という問題に、我々の倫理観を適応させることだ。年収300万でも生産性向上によるデフレで充分食っていける。食っていければそれでよしとして、GPCMTな人が1億円稼いでいるのを見て、やせ我慢でなくハッピーでいられるか?

アメリカで階層分化を起きたことが問題なのではない。知的生産で極端に生産性が違って、階層分化が起きるのは必然である。「アメリカンドリーム」というGPCMTな人をよしとする価値観しか提供できなかったことが問題なのだ。年収300万の人が無理なく自分にOKと言える価値観を持てないことが問題なのだ。そして、同じチャレンジが我々をすぐそこで待っているような気がする。