[?date=20020701#c01:title=三郎さんへ]

日本の社会システムには、多くのしがらみとあいまいさがあります。犯罪率の低さや高度成長期の経済発展は、それがうまく働いた結果だと思います。しかし、バブル崩壊以降、これがさまざまなかたちで足かせとなっていることも事実です。

例えば、日本のサラリーマンにとって、企業は単に給与を得るための場所ではなくて、そこに所属してまったりとする場でもあります。これがプラスに働けば、QC運動のような現場からの発想に基づく改善による能率向上が行なわれ、部門別の利益でなく会社全体のことを考えて緊密に連携する組織になります。しかし、マイナスに働くと山一證券雪印のように、会社の危機にトップダウンで対応することができず、反社会的と言えるほどに自社の利益のみを考えて、かえって破滅に近づくことになります。

官僚や政治家が、国家の長期的な繁栄に反する行動をするのも、彼らが馬鹿であるからではなく、同様の共同体的意識としがらみの中で、身動きとれないという面があると思います。

しかし、このような社会システムを一気に解体してしまうことは、多くの反動が予想され危険なことです。「失なわれた10年」を過ぎてなお、新しい展望がひらけないのは、この矛盾がいかに大きいかを示しています。

こういう時期に、2ちゃんねるという匿名掲示板が産まれたのは偶然ではないと思います。つまり、みんな建前としがらみの中で窮屈な思いをしていたのです。そして、正しいことがわかっているのにそれを発言できないいらだちを感じていたのです。そのエネルギーを2ちゃんねるが吸収したのだと思います。

私は、匿名掲示板というのは、日本の社会システムに対して補完的な役割を果たすことができると思っています。つまり、日本では本音の議論をするためには、皆匿名にならざるを得ない、少なくとも立場のある社会人にとってはそうなのではないでしょうか。語るべき本音を持ちあわせている人は、みんなここで本音を吐き出しているのです。

例えば、道路問題ひとつとっても将来のあるべき姿を議論をするだけのこと、その人選をすることだけでもモメにモメます。これでは結論を出すまでどれだけ時間がかかるかわからない。かと言って、道路族を全部排除すると総選挙→政争でこれも時間がかかる上に政権が安定するまで時間がかかってしまいます。

そんなことをするより、問題のある組織を全部「ちくり」まくって解決した方が早いし有効です。2ちゃんねるで告発合戦をしてから本音の議論をすれば、本当に問題があって緊急に対処すべきことが、力関係抜きですぐわかると思います。現状の社会システムを維持したまま、悪い所を2ちゃんねるでつぶしていくのが、一番早くて安全な方法です。

ひょっとしたら、アメリカのように、理念や目的適合性を重視したトップダウンの組織で構成された社会システムより、建前社会+2ちゃんねるという二段構えのシステムの方が柔軟で優秀なシステムかもしれません。

だから、2ちゃんねるの常識やルールは、当然実社会と一致しません。一致しないことに意味があるのです。一致しないことに公益性があるのです。