野中の笑顔

今回の政局で一番印象的だったのは、野中の笑顔だ。政治家でちゃんとした顔のできる奴はそんなにいないが、野中は実に陰影のあるいい笑顔を見せていた。それを見て直観したが「あっ、こいつ負けた加藤の気持ちがわかってる。一番加藤の気持ちがわかっているのはこいつなのか」

相手の気持ちがわかるということは、相手の気持ちに同調することではない。野中には同情はないし冷徹な計算やひょっとしたら憎しみも同じこころの中に同居している。それだけ、キャパシティーが大きいということだ。

ギリギリの勝負では、勝者が勝者になることを選択するのではなく、敗者が敗者になることを選択した時に勝負が決まる。敗者の気持ちを自分の中におさめられる者が勝者になるのだ。敗者は勝者の中にそれを見た瞬間、敗者になることを受けいれる。

秀吉や家康の勝ち方はこんな感じだったんだろうね。もちろん、俺は人間ドラマでなく政策で政治が進むことを望むが、人間ドラマは確かに見えたので、それはそれで書いておく。でも繰り返して言うが、今、本当に必要なのは信長だと思う。