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援助交際の買う側の男についていろいろ知りたい。どんな奴で、何を考えているのか。どんな職業についていて、収入はどれくらいで、他に趣味があるのか。どんな政党を支持しているのか、ネットをしているのかしてないのか。 imodeは使うのか使わないのか。定量的なデータもほしいし、生の声をインタビューしたものも見てみたいし、心理学的な分析も欲しいし、宮台真司にも論じてほしい。

これが何ひとつとしてないのはどういうことだろう。売る側についてはカタいものから風俗っぽいアプローチまで、いろいろな観点からたくさんの報道や分析があるのに、買う側については何ひとつない。

尾木直樹という教師をやっていた人が「非難するなら買う方を非難しろ」と言っているのを読んでいて、このことに気がついたのだけど、非難するとか問題にする以前に何も情報がない。この情報の偏りには何か重要な理由があると思う。法的にも倫理的にも買う側の方が罪が思いし、おそらく日本独自のことだから日本人論という切り口でも扱えるし、もちろん心理学的、社会学的にも重要なテーマであるはずだ。でも、決まってテレビで「援助交際がなんたら」と言うと売る側の女の子たちが出てくる。

少年犯罪でも本当に問題にすべきなのは、これと対になっている大人の側の歪だろう。援助交際みたいに、大人の側にどういう奴がペアになっているのかがわかりやすくはないが、必ず何かペアになるものがあるはずだし、そっちの方が本質に近いはずだ。

どうしても少年の側から接近したいなら、「思春期の言葉」を理解してからじゃないと話にならない。これは、*村上龍*がニュース23に出て言っていたことだが、彼らはちゃんと自分を語る言葉をまだ持っていないのだ。「ムカツく」とか「キレる」とかという言葉は、「この背後にあるものを自分は表現できない」と言っているだけで、彼らの内面で起きていることを1%たりとも表現していない。「大人の不正に対する怒り」とか「将来に対する夢がない」とか、そういうわかりやすい言葉にはおさまらないのだ。「動機が不明」とか、さも不思議そうに言うけど、これは素人に解明できるもんじゃありません。天才小説家とか熟達のカウンセラーが扱うべき領域で、相対性理論量子力学の統合とか160kmの速球を投げるくらい難易度の高いこと。

だから、我々素人は大人の側から迫るしかないのだが、これはたぶん「痛い」んだろうね。「買う側のことを知りたい」と言ったけど、本当にこれを深く知ったら自分の中にもそういう一面があることを認めなくてはいけなくなるような気がする。