人材がいても潰れる

「峠」読了。主人公の生き様も心に焼きついたが、*司馬遼太郎作品の常として、脇役にも印象に残る人がたくさんいた。そして全体の印象として、幕府側つまり旧体制側にもずいぶん人材はいたんだ、ということを知った。特に情勢のよく見えている人は意外に多かったということも。

軍隊も金も人材もちゃんと揃っていて、あれだけあっけなくつぶれるのは何かというと、組織の違いだ。組織が人の邪魔をしていたのが幕府で、組織が人を生かした(というよりしゃぶりつくした)のが薩摩、長洲。組織が違うといってもほんのちょっとした違いなんだろうけど、激動期にはほんの少しの違いで情勢が大きく傾く。

前回これを読んだ時には、長銀山一證券もつぶれていなかったわけで、そこまで読みこめなかったし読めたとしてもただのフィクション、あるいは遠い国のできごとみたいに思ってしまっただろうけど、「人材がいても潰れる」という実例を知ってから読むと、これがよくわかる気がする。