宮台真司

「正直である」ということは最も基本的な道徳のひとつだと思う。私はプログラミングという自分の商売の中でこれを実感している。正直な技術が結局伸びる技術である。ただ「正直」という時に、現実をちゃんとあるがままに先入観無しに見る、ということと、自分のわかることとわからないことをきちんと区別するということもも含めたい。「見る」ことや「区別」するためには、理論や知識や眼力が必要で、これは「正直」という道徳的な言葉からちょっとはみ出てしまうかもしれないけど、それくらいの技術とパワーと覚悟を背景にしていない「正直さ」は価値がないと思う。

そういう意味で宮台真司は正直な人だ。彼が援助交際覚醒剤を論じる時、常にフィールドワーク(たくさんのヤッてる人とのインタビュー)と各種アンケートなどのデータを出発点にしている。(ルーズでない)ハイソックスと長めのスカートをはくと援助交際の値段が高くなるという現実、覚醒剤が急速に拡大しているのに少なくとも都市部では中毒者の数は増えていないという現実。こういうよくわからない現実を直視することからスタートして、本当にそういう行為の何が害になるのか、どのような危険性があるのか、そういう害や危険性から若者が自分を守るには何が必要なのか、を論じている。

その上で、援助交際のことは「僕にも本当のところはよくわからないのです」と正直に言い、そこが出発点なのだという。彼には7才の娘がいて、彼がテレビに出てそういうテーマについてしゃべっているのを見ている。帰って来てその娘に「売春て何?」と聞かれた時のことも書いている。彼は一切のウソやゴマカシ無しにちゃんと7才の女の子にわかるように答えてます。

さらに、そういう行為がごく一部の若者のことだという理屈に対しては、「やらない方が99%から90%になっても1割の変化、同じことをやる方に着目すると1%から10%という10倍の変化」だ。だから、やる方に着目し調査し論じ対策をこうじる必要があると反論する。

今日は彼の「学校を救済せよ」という本を読んですごく感動しました。この本には、(世間的にな意味で)一般的な中学生を論じている所もあって、そっちもすごくいいです。親にも教師にも今のこの社会で子供のことは背負えないしわからない。「正直に」過大な期待をおとすことからはじめるべきだと。