資本主義V2.0

ホットワイアードに業界人の交換日記というコーナーがあって、田口ランディ*さんの名前に引っ張られて読んでみたら、他の2人のも面白かった。特に、松山大河という人が面白いことを言っていた。「Linuxを作ったリナス・トーバルズのように『利潤の最大化』に興味の無い人が増えてきたら、資本主義*はどうなるか?」この問題提起自体は私もしているし、他にも口にする人は多いけど、彼はこの問題に資本主義V2.0という絶妙のキャッチフレーズをあてていた。

これには深いものがあると思う。反資本主義というと、かっての共産主義がそうだったように、お金というものを徹底的に敵対視する立場と思われがちだ。しかし、リナスは(そしておそらくこの松山さんという人も)そうではない。ある程度の利潤は追求するけど、「利潤の最大化」を追求しない。ボランティアで無償の貢献をするというと、聞こえはいいけど継続しないことが多い。会社に限らず、ある程度の事業を回していくには、適切な利潤を得ることは必要だ。問題は、「利潤を最大化」しようとすることで、マイクロソフトのように利潤を求める指向性が一定の限度を超えた時に初めて、個人あるいは私企業と社会全体の利益が相反することになる。共産主義は、度合いを無視して全ての「利潤の追求」を否定した所に無理があった。しかし、資本主義V2.0は「利潤の最大化」を否定するけど、利潤の追求そのものは否定しない。「適切な利潤」と「利潤の最大化」の間に線を引くのだ。

資本主義V2.0仕様の会社や人は増えている。個人にとっては、V1.0(利潤最大化)との違いは少なく移行のコストは小さいから、これから加速度的に増え続けるだろう。しかし、マクロな経済や社会の仕組みは相当大きく変わる。社会にとってはV2.0のインパクトは大きい。